閑話 第三話
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スターレックス》が出現する七階層へ。
疲労で悲鳴を上げる両膝を無視して一気に階段を駆け上り、冒険者たちが吐き出される通路へ走る。
「クレアっ! クレアっ!!」
私の呼びかけに、一斉に冒険者たちが目を剥き振り向いてくる。神はダンジョンに立ち入ることを禁止されている。それはダンジョンが神の■■■■■だからなのだが、ともかくダンジョンへ続く通路に神がいるだけで異常事態だ。
『ちょ、ちょっと待ってください、神セレーネ!? これ以上の侵入は……!?』
「クレアがっ! クレアが危ない!」
入り口の両脇に立っていた衛兵に羽交い絞めにされても、私は足を止めることは出来なかった。
クレアが死んでしまうかもしれない。そう思っただけで狂おしい。私の大切な娘が心配で堪らない。このままでは私も心を潰されてしまいそうだ。
涙が視界を滲ませてきて、何度も声を張る喉が痺れてくる。周囲から奇異な目線が集中し、冒険者たちも皆揃って足を止めて近くにいる者に『クレアって誰だ?』と囁きあっている。
しかし、私の声に返事をする、あの可愛らしい声は一向に聞こえない。愛おしい姿は見えない。
まさか、もう時は遅かったのか。背筋がぞっと凍てついた、その時。
「セレーネ……さま……?」
「クレアっ!? 良かった、まだダンジョンには───!?」
たった今、《大穴》から姿を現したクレアに、憲兵の拘束を振り払って駆け寄った。だけど、最愛の娘の姿は満身創痍と言うべきものだった。
装備はレグス以外全部ひしゃげて、インナーは肌を隠す面積より晒している面積の方が大きく、空気に触れる肌は全て完膚なきまでに傷が刻み込まれていて、インナーの至る所が赤黒い染みを作っていた。
上半分が強引に引き裂かれているバックパックを背負っていて、中から黒光りする大きな甲殻と二対の刃のようなもの、鮮やかな紅に輝く巨大な魔石が覗いている。
杖代わりにされている槍の穂先は完全に無くなっており、残った柄の先端もモンスターの血で汚れている。
艶やかな藍掛かった黒髪はボサボサに跳ねまくって、可愛い顔も付着している血と埃で台無しになっている。
地上の床を踏むことが最終目標だったかのように、私が駆け寄ってきたと同時に体を前傾させて、小さな体が力なく私に寄りかかった。いつも抱き寄せている時よりもずっと重く、体にろくな力が入っていないことがすぐに解った。
こんな状態でいつもダンジョンから帰還しているのか。いや、回復薬を飲んでもこれだけの疲労と怪我は回復しきれない。
まさかと思ってクレアの顔を覗き込めば、クレアもまた私を見上げていて、力なく笑った。けれど、その笑顔は達成感に満ち溢れていた。
「セレーネ様……私、やりました……。階層主……倒し、まし
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