閑話 第三話
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度はその弱点へ至るための切り口たる隙を探さなければならない。蟻の腹は対面した状態だと一番奥へ隠れてしまう。腹を攻撃するためにはまず鋏の攻撃を回避して、六本の脚による阻害を切り抜け、加え蟻の体位の入れ替えをなされる前に辿り着かなければならない。現実的じゃないな。
となると、蟻の背後から迫るのがベストだろう。体勢の変化以外の問題は解消できる。しかし、背後を取るためには私は通路を迂回しなければならない。その間に蟻が方向転換すればおじゃんになる。これもあまり現実的じゃない。
どうすれば隙が生まれるか。これがポイントになってくるね。隙を見出す方向から作り出す方向へシフトした方が良さそうだ。
私が黙考している最中、突如として背筋に絶対零度のような悪寒が走った。
「っ!?!?」
悪寒の押されたように、私は反射的に体を曲がり角から放り出した。しかし、私の左腕と左脇腹に強烈な熱が迸る。
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!」
私の絶叫の直前に、バチン! という音が背後から発生した。堪らず脇腹を押さえながら即座に振り向けば、そこには顎を噛み合わせた状態で止まっている蟻。
バカな!? 確かに思考に集中していたとは言え、足音を聞き漏らしたはずはない! 一体どうやって背後へ!?
私の驚愕をよそに、鋏の先から私の血を滴らせる蟻は顎を開き、再び襲い掛かってきた。
『ギイイイイイイイ!!!』
ようやく獲物を食い千切ることができる喜びか、潜めていた咆哮を惜しげもなく轟かせ、必殺の挟撃を敢行した。
「うぅっ!?」
己の体に鞭打ち曲がり角を挟んだ通路へ転がった。そして鋏が情け容赦なく動いた───が。
ガガガガガガッッ!! と、片方の顎が壁面を盛大に削り、片方の顎はぶつかる相方を失い丁度90°のところで停止していた。
不可解な現状に痛みを忘れて見入っていたが、直後に脳裏に閃きが走った。
そうか! 曲がり角で鋏で挟撃しようにも、片方は壁が邪魔になって挟みきれず、相対的にもう片方も挟むことが出来ないんだ! しかも動かせる範囲が90°までだから、片方だけで攻撃するということも出来ない! 加えて壁に食い込んだ片顎を外すのに時間が掛かる、その時クルセイド・アントは身動きが取れない!
隙を見つけた私の行動は速かった。床に零した槍をすぐさま引っ掴み思い切って蟻の目の前に踊り出す。予想通り蟻は顎を十分に動かすことは出来ず、私を攻撃することは叶わない。
迅速に蟻の頭部を通り過ぎ、胸部の真下を走りぬけ、ドス黒い赤の十字架目掛けて渾身の刺突を放った。
『ギャアアアアアアアアアアアアア!?!?』
入った。穂先が全部突き刺さった。コボルトよりも刃の通りが良い。蟻も思わぬ激痛に断末魔
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