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ダンジョンに出会いを求めるのは間違っていた。
閑話 第三話
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に把握できない。それは私にも言えることだが、向こうはやたらめったら叫ぶし、走るたびに地鳴りが凄まじい、これだけの判断材料があれば大よその現在位置を抽出するのは難しいことではない。

 それにしても、疲労困憊前門の虎後門の狼絶体絶命の状態に陥っても、これだけまともな思考をはたらかせられるのは日々の努力の成果だ。私は常に不利を背負って戦わないといけない身だから、どうしても相手の弱点を突き続けるしかない。相手の弱点を知るには冷静な現状分析をする必要があり、興奮と緊張が強いられる戦闘中に冷静な思考を保ち続けるのは困難を極める。もちろんそれは私が物覚えの悪い人だから、というのもあるけど、六層に足を踏み入れて《ウォーシャドウ》と初めて戦った時に習得した技術だ。

 とにかく冷静になること。少しでも無理だとか、ヤバイとか考えないこと。現状を理解して、どうすれば勝てるか頭の隅で考えられること。常に建設的な心構えを持つこと。これらの要件を頭と体に刷り込んでようやく出来た。刷り込むまでに二年と半年掛かりましたけどね。
 最初は大変だった。考えてれば体がお留守になってぶん殴られるし、相手の攻撃を避けるのにいっぱいいっぱいで考えてる暇なんて無かったし、囲まれるだけで「どうしようどうしよう」の文字が脳内をハイジャックするし……。毎日十五時間ダンジョンに潜って戦い続けてようやく出来るようになった……。それがまさか階層主と1on1の戦闘に活用されるなんて思わなかったよ……。階層主なんて私から見れば仮想上の敵に等しい。一生までとは言わないけど、少なくともLv.2になるまで見ることはないと思っていた。

 閑話休題として、骨の髄まで染み込んだ思考回路によって、密閉空間に閉じ込められた利点を頭の中に並べて、ここから更に勝ち筋を模索していく。

『アアアアアアアアアア!!!』

 閉じ込められたことにか、はたまた雑魚がちょこちょこ逃げ回るせいで攻撃することができないことにか、これほど憤怒と憎悪に満ち溢れた咆哮は聞いたこと無い。鼓膜を叩くたびに本能が体を竦め、いかに自分が矮小かであることを思い知らされ、相手との絶望的なまでの力量を鮮明に理解する。

 だが、それが即ち不可能という訳ではない。私は常に不利を背負って戦っている。背負う不利が少し増えただけ、勝機が潰えたわけじゃない。人は考えることが出来るから、どの生物よりも上に立てるのだ。唯一の武器とも言える思考をフル活用すれば、勝つことは出来る。

 部屋中に反響する咆哮により、蟻が私が身を潜める角を作る通路を爆走しているのが解った。すぐさま私は蟻のいる通路とは逆の通路に駆け出し、再び角へ身を押し込む。蟻の視界に入る前に移動することで、蟻に私の現在位置を知られることなく逃げ続けることが可能だ。それだけで多大なアドバンテー
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