第十六話
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しか出来ない。
「でもこうも言ってました。『武器は使われるために欠陥を抱えている。欠陥がなけりゃ、武器が独りでに動いて、独りでにモンスターをぶっ殺せば済む話だ。そこに俺たち人が介入する余地なんざありゃしねぇ』と」
子供が抱いた拙い夢を元の形に戻した大英雄は、それを差し出す。
「確かにそうですよね。欠陥が無いなら勝手に動いてもらった方が、本来武器を生み出した理由にかなってます。最後に刀匠は『だから俺たちが世に送り出す武器は全部妥協品に過ぎねぇ。人に使ってもらえるようにわざと欠陥を与えてるんだからな。逆に考えりゃ、人が使えば、それで欠陥は無ぇわけだ。そうなるように、人が使うというピースを当て嵌めれば完成となるように、武器を作れば良い。それが俺たちの言う完璧な武器だ』と言いました」
「欠陥を抱えているのが、完璧……?」
「そうです。99%が完成された武器は、逆に言えば1%は欠陥を抱えています。その1%を埋めるのが使い手です。だから、その1%を限りなく0に近づけていけば、それだけ完璧な武器に近づけるということです。それこそがナチュルさんの言う黄金比じゃないんでしょうか」
私は刀匠じゃないので偉そうに言えませんが、と付け加えた。そう言いながら、罅が入った歪な夢を差し出してくる。これを追いかけるのが役目だと、差し出してくる。
輝きを失ったはずのそれには、仄かに光が宿っていた。私はそれを、受け取った。
「……なら、追いかけさせてくれる?」
「?」
「これからも私は薙刀を打っていく。でも私は鍛冶師。作っても使えない。だから、私が作る薙刀を使って、欠陥を埋めてくれる?」
私の大英雄はニッコリと容姿相応の可憐な笑みを浮かべ、私の手を握った。
「私に出来る限り応援します」
その手は私が想像していたよりも遥かに大きく、暖かい手だった。
◆
私の正体を薙刀に賭けて秘密にすると誓ってくれたナチュルに重ねてお礼を言うと「なら早速夢を追いかけなくちゃね」と頬を高潮させながら倉庫からあれこれ素材を引っ張り出し始めた。作業を見てても良いと言ってくれたが、やはり集中できるように席を外させてもらった。
いやー、まさかナチュルの薙刀好きの原因は私だったのか……。何だか気恥ずかしいなぁ。こんな立派な工房を貰ってるからナチュルの腕も相当だろうし、本当に薙刀の黄金比を見つけ出しちゃいそうだ。
その点、私の知り合いの刀匠には感謝だね。しょっちゅうオーダーメイドを注文しに来る私に嫌味交じりに言ってきた言葉だったけど、同じ鍛冶師として感銘を受ける何かが込められていたようだ。
今まで独りで隠し事をしていた分、誰かに打ち明けられたのは肩の荷が下りたような気分だ。これからも私の専属鍛冶師として活
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