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ダンジョンに出会いを求めるのは間違っていた。
第十六話
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 ナチュルは捨て身の大爆発を起こした代償として渾身の精神力を注ぎ込んだため、レイナの手を取った瞬間に思い出したように体が横に倒れ、投げ捨てたバックパックに入っている精神力回復薬(マジック・ポーション)を急遽取ってきて、それを呷った。いくら《神の恵み》と呼ばれた【ヒリング・パルス】と言えど、対象の精神力を回復させることはできない。出来てしまったらクレアは無限に魔法を使える道理になってしまうだろうし、それは神の恩恵(ファルナ)も許さないだろう。
 上半身が下着だけの状態はさすがのナチュルでも遠慮願いたいものであり、バックパックの中にあった鉱石をまとめるための布を取り出して身に着けた。

「ごめんなさい、そろそろ移動したほうが良さそうね」

 二十階層へ行き来していた分、残っていた精神力回復薬も少ししかなかったため、何とか精神力枯渇状態(マインド・ゼロ)は回避できたものの、顔はわずかに青白く未だ体がふらついてしまう。それでもナチュルは構わず逃走を優先した。

 レイナの説明によると、あの花たちは魔力に機敏に反応して、発生源を優先的に狙う習性があるらしい。となると、莫大な魔力を解放させてしまった今、湖畔の方からまた新たな花たちが追いかけてきているかもしれないからだ。
 薙刀を支え棒代わりにし、レイナにアイテムがまだ残っているバックパックを担いでもらった状態で再び逃走を始めたが、一向に花たちが襲ってくる気配は無かった。怪訝に思ったナチュルだったが、すぐに合点がいった。

「そろそろかしら」
「? なにがですか?」
「世界最高峰の魔法よ」

 ナチュルがレイナの聞き返しに予言した瞬間、彼女たちの背後から、正しくは花たちが夢中になって群がっている(リヴィア)から、十八階層のどこからでも感知できるほどの魔力が迸った。
 肌で感じ取った二人が街に振り向いた直後、遠く離れた場所にも届くほどの凄まじい轟音が鼓膜を叩き、大炎の極柱が街の中央から連続して昇った。蒼然とした闇に包まれていた街は一瞬で赤く燃え上がり、さながら星のようだった。上空が鮮やかな紅色に染まりあがり、遂に天蓋にまで届きえた夥しい火の粉が盛大に舞っていく。

「凄まじい火力とレンジですね……」
「魔法に長けた我がエルフ族の中でも最高峰の才能を持った人が使えば、想像に難くないわね」

 ナチュルがエルフ族の里にいたころでもリヴェリアの話題が尽きることは無かった。曰く、過去を振り返っても彼女ほどの才を持った者はいなかった。曰く、我々はその彼女を連れ戻すべきではないか。曰く……。
 王の血統を引くリヴェリアはその肩書きに恥の無い成績を、世界の中心たるオラリオで上げている。Lv.6に到達しえた彼女を、都市という枠組みを越えて世界最強の魔道師と称える者は少なくない。そんなリヴ
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