閑話 第二話
[7/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
.1でも探索できる範囲の冒険者依頼は発見された瞬間取られるに決まってる。クレアが朝早く行くのはそれも含んでいるのかもしれない。
めぼしいのは無いかなぁ、と思って流していると、先ほどちらっと聞こえた『七階層の迷宮の弧王復活』と書いてある知らせを見つけた。
へぇ、丁度今日だったのか。クレアが行こうとしていた階層だし、休んでおけって言っておいて良かった。何せ王と言われるくらい強いんだし、さすがにクレアにはまだ早い。
お邪魔しましたー、と譲ってくれた冒険者たちに断りを入れてからギルドを後にした。
「ただいまー」
程なくして家に帰り、玄関に両手に持っていた買い物袋をどさっと置く。挨拶をしても帰ってこなかったということはまだ寝ているのかな? まあ昼になったら起こすって言ったから寝てるか。
靴を脱いでリビングに入り、ちゃぶ台に買い物袋の中身を広げ時計を見る。丁度正午ちょっと前だから起こそうか。
そう思って布団が敷いてある場所に目をやると。
「……あれ? いない」
半分に折られてはだけている布団にクレアの姿は無かった。ならトイレかと思って扉に近づいても何の音もせず、シャワー室を覗いても誰もいない。
思わず眉根を寄せて部屋中を回ってもクレアはいない。というか、リビングの隅に置いてあるはずのバックパックがない。
「……え」
クレアがいつも履いている靴も無い。
そこで、暢気な頭が急激に冷えていくのを感じた。
昨日クレアは七階層に行けないこと、偉業について凄い思いつめていた。そして今日、七階層の迷宮の弧王が出現すること。
あまりにも嫌な単語が、凍えきった私の脳内で並んだ。
「嘘でしょ……」
自分が呟いた言葉とは裏腹に、私の足は覚束ない足取りで玄関へ足を向こうとしていた。
そして、クレアの身が危ないと理解した途端。
「クレアっ!!」
部屋の鍵を閉めることすら忘れ、堪らず部屋を飛び出した。
◆
セレーネが買い物に出かけて一時間ほど経ったとき、クレアはふと目を覚ました。二度寝したくなるほどの眠気に襲われていた彼女がなぜ一時間だけで起きれたのか、本人ですら解らない。
ただ、彼女が三年間体に叩き込み続けた習慣が災いした。
「ふぁ……もう朝なのぉ?」
そして、クレアには今日二度寝したという記憶が無かった。半分寝ていた状態で朝ご飯や顔洗いをしていたのだから、仕方の無いことだったのかもしれない。
加え、今日は清々しいほどの晴天だ。曇りや雨だったら外が暗くなってふと時計を覗くだろうが、午前から午後まで常に明るい晴天だと、起きたばかりの彼女に早朝だと勘違いさせてしまう。
「セレーネ様……?」
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ