第十五話
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を反射的に把握したナチュルは、空中で体を回転させて着地の姿勢を取り、靴底で草の絨毯を抉りながら無事に着地を成功させた。
そして気絶した直前に味わった激痛に備えたが痛覚らしき痛覚は全く無く、見るも無残な姿になっているであろう自分の体を恐る恐る見下ろした、が。
「……なにも、ない……?」
完膚だった。小さな掠り傷すら残っていない。しかし、彼女の記憶を裏づけるように、彼女が纏っていた着流しが爛れており、上半身ははだけ掛けたボロボロの下着だけの状態だった。
あまりに不可解な現状に柳眉を顰めたナチュルだったが、長く尖った耳が捉えたおぞましい咆哮に意識を前方に向けた。
すぐに木々の間を食い破るようにして花の群れが姿を表した。気絶したナチュルだったが冒険者として─薙刀へ対する愛が深いためかもしれない─己の得物を硬く握り締めていたため、直ちに八相の構えを取った。
しかし。
『アアァァァ────!?!?』
嫌悪しか喚起しない花は生え渡る牙から粘液を咆哮と共に撒き散らし、遂に噛み付こうとしたその瞬間、背筋が凍るほど正確に垂直の一閃が花の脳天から突き抜けた。
瞬きも許されない刹那、花はぼろぼろと黒い灰へ返り、積もった塵の中に不気味な極彩色を放つ大きな魔石が綺麗に真っ二つに断ち切られていた。
そして、花の背後に隠れていたレイナの姿が露になる。何で逃げなかったの、という言葉を彼女の理性が許さなかった。
自分の瞳とあったレイナの瞳が、あまりにも静かだったために。底まで見えそうなほど澄み渡った湖を覗き込んだような、言い様のない何かが言及どころか身動きすら許さなかったのだ。
全身を鎖で雁字搦めにされたように動けなくなったナチュルの眼前のレイナに、再び魔力を感知した花たちが一斉に振り向いた。が、しかし、花が振り向いている最中に音もなく動いたレイナは、ナチュルが気付いたときにはレイナの近くにいた花のすぐ傍に立っており、そう思ったときには薙刀が振り切られていた。
『────』
もはや断絶魔を与えることすら許されなかった。魔石ごと断ち切られた花の花弁が一気に枯れたかのように灰へ返り始めた頃にはもうレイナは次の標的に迫っていた。
『』
何で、何でレイナはあんなにも速く動けるんだ。ナチュルは呆然とする意識の中でようやくその疑問符を掲げることが出来た。しかし、一瞬後に自分が呈した疑問に自分が答えた。
無駄が無いのだ。あまりに淀みなく、あらゆる無駄を削いでいるため、化け物じみたステイタスが無くともLv.5相当、いや、それ以上の速度の移動を可能にしているのだ。
そして、薙刀に無理が掛かっていない。まるで自分の四肢のように、極自然と薙刀が走っているのだ。凄絶なほど滑らかに空気を薙ぎ続ける
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