第十五話
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距離で発生した紅蓮の爆炎に一瞬で灰と化し、直接触れていなかったものの爆発した近くにいた花も巻き込まれ痛ましい悲鳴を上げる固体もいれば、口の奥に埋め込まれている魔石に爆炎が届き焼き尽くされたために粉々になった固体もいた。
詠唱式が極めて短く、少量の精神力でも十分な火力を叩き出す【エクスプロージョン】だが、対象と何かしらの接触がなければ発動しないという特性上、その爆風はナチュル本人にも牙を向く諸刃の剣だ。精神力の調整をすれば無害で済ませられるが、今の爆発に注ぎ込まれた精神力はナチュルの意識を一瞬飛ばしてしまうほどだった。
どうせ使うなら考え無しにぶっ放してやる、大雑把な彼女らしく最後まで大雑把にぶっ放された爆風は彼女の体を叩きのめした。
「っっうっぐっっ!?」
体内で何かが粉砕する音が立て続けに奏でられた。僅かに遅れて喉にせり上がってきた大量の血が、彼女の艶やかな唇から溢れ出す。精神力枯渇状態に限りなく近い症状のせいだけでなく、全身を激しく殴打した爆風によって走った激痛によって、明後日の方向に体を吹き飛ばされながらナチュルの脳は拒否反応を起こし強制的に意識を絶った。
彼女が容赦なく振りかざした諸刃の剣によって、追いかけていた三十体を越える花のうち二十体ほどを散らしてみせた。それだけで渾身の【エクスプロージョン】の威力を察することが出来る。
これはナチュルの言った囮としての意味に於いて、この上なく覿面だった。
ナチュルを無視して立ち止まったレイナに襲い掛かろうとしていた花、花弁が焼き爛れた花、最後尾にいた花、それら全ての花の注意の矛先がナチュルに向いた。
仲間を殺された憤怒からではない。彼らの最も過敏な魔力を使ったからだ。
ぐるんと、それまでの体勢を覆し、己の魔法の爆煙を引いて吹き飛ばされたナチュルに、数多の顔の無い頭部が向けられた。
「ナチュルっ!?!?」
ボールのように飛んでいったエルフの名を咄嗟に叫んだレイナ。しかし木々の枝を背で叩き折りながら意識を絶ったナチュルはその呼びかけに応えることはできず、爆風に乗ってきた焼かれた際に発生する臭いが充満した。
レイナの悲鳴も虚しく、花たちは触手を鞭のように振り上げながら瀕死のナチュルを滅多打ちにすべく彼女の後を追った。
◆
馬鹿だ、とレイナは思った。
天蓋いっぱい生える結晶郡が星のように輝き、光を照らしている最中、花たちはその光を浴びて狂喜するように咆哮を上げ、絶大な爆発に身を巻き込まれたナチュルに追い討ちを掻けようと殺到する。
耳に届くあらゆる音が遠のく。傍で光を発する結晶が、足元に広がっている草原が、鼻につく噎せ返るような不快な悪臭が、破れてしまいそうなほど激しくなる鼓動が、五感全て
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