第十五話
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背後から追いかけてくる気配に二人とも人知れず顔を歪め、地を蹴る力を更に強める。しかし、花たちも一筋縄ではいかずズルズル体を引きずるように移動しているくせにやけにスピードが速く、徐々にだが確実に二人に追いつこうとしていた。
それを肩越しに一瞥したナチュルは逡巡する素振りを見せたが、持っていたバックパックを握る手に力を込め、言葉を紡いだ。
「レイナちゃん、あなたは先に逃げてなさい」
「は、はぁ!? ナチュルさんはっ!?」
ステイタスの加護が薄いレイナの体力は、十九階層を切り抜けるときにはすでに半ばほど消費されていた。それも十七階層に逃げるための全力疾走で切れつつあった。それが浮き彫りになって息が切れているレイナは顔を上気させながら叫んだ。
一方ナチュルはLv.3と高いステイタスのお陰で汗こそ掻いているものの息は切れていない。そして共に逃げるレイナは息も絶え絶え、加え十三歳という若さだ。それだけでナチュルとして十分な踏ん切りだった。
「私が囮になるわ」
「ふざ、ふざけないでくださいっ!! あれだけの数を相手に一人なんて、そんなの囮にもなりません!!」
「なぁに、Lv.3の私に掛かれば大丈夫でしょ。子供は大人の言うこと聞きなさい」
そもそも、ナチュルには負い目がある。いくらLv.2のトロールを単独で倒したと言えど、それが即ち中層と渡り合えるかと言うと全く違う。中層はモンスターの強さもさることながら、頭数が増えることが最も厄介なところだ。一対一ならまだしも、多対一で渡り合おうなんてLv.2の冒険者でも無理なのに、Lv.1にとって無謀にもほどがある。
Lv.3の自分がいるから何とかなるでしょ、と持ち前の悪癖がレイナの命の危機に追いやったのだ。責任は取らなくてはならない。
子供を安心させるような余裕な笑みを浮かべて勝気なセリフを返すナチュルだが、レイナには己の恐怖を隠すためのポーカーフェイスにしか見えなかった。
「聞けませんっ! そんなこと───」
「真っ直ぐ進みなさい。後ろを振り向くんじゃないわよ」
悲鳴に近いレイナの叫び声を遮るように言い残したナチュルは、道脇に生え並ぶ結晶郡にはち切れそうなバックパックを乱雑に放り捨て、踵を返してレイナの視界から失せた。
ナチュルの残滓を追う様にレイナが言いつけを破り首を回した。
すでに凶悪な花たちに肉薄し、紅い燐光を点す薙刀を猛然と振りかぶろうとしていた。
「【爆ぜろ】!!!!」
喉が裂けんばかりに放たれた砲声と共に、鍛冶師の体から洪水のような量の魔力が迸った。
【エクスプロージョン】の最高出力は果たして、彼女に噛み付こうと口をばっくりと空けた花たちに走った一閃の後、遅れて大量の大爆発を引き起こした。薙刀で口を斬られた花たちは零
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