第十四話
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真っ最中の希少金属に手を伸ばそうとするナチュルを慌てて引き止める。
今もなお誰かが五倍の値段で買い取るなんてふざけたことを言っているさなか、ナチュルは自分の財布の中身を見て「もう少し持ってくればよかったわ……」と本気で悔しそうに呟いた。失礼だけどナチュルさん、あなたよくそんな調子で今まで破産しなかったね、いや本当に。
街に入ってから十分ほどしか経たない内にナチュルが鍛冶師として喉から手が出るくらい欲しい金属を目の前にしたからか、早く金属を掘り返しに行こうと言い出し、早々に十九階層に潜ることになったのだった。
◆
安全階層を挟むせいか、十七階層と十九階層とでは少し質が違う。さながらダンジョンが「お前ら休めただろ? ならこれくらいできるよなぁ?」と意地の悪い笑みを浮かべながら囁きかけているようである。
その内容はモンスターの強さもさることながら、罠の凶悪性やモンスター同士の連携、迷宮の武器庫の多寡と多岐に渡る。私の場合は罠は関係ないけど、やはりモンスターの一体一体が強くなってくると技術だけで押し返せるものではなくなってくる。
Lv.3のナチュルもフォローに回り辛くなってきており、頻繁に魔法を行使するようになっている。
ダンジョンというのは天使のような悪魔の笑顔を浮かべるもので、階層が深くなればなるほど地上では絶対に採れない希少価値の高い物資が大量に眠っており、冒険者たちはその富の元を目の前に目がくらみ、どんどん深く潜っていく。さながら蟻地獄のように欲望という引力が深淵へ誘う。
実際私もLv.9になった頃は階層主を探す片手間に、まだ発見されていない未解の物資を集めては地上に持ち帰っていた。あまりにも多く見つかるものだから色んな安全地帯に集めておいて、次に潜ったときに持ち帰るなんて事をしてたから、たぶん回収し切れていない場所もあるんじゃないかな。もう覚えてないから私自身で回収できないけど。
そんな訳で十八階層まで降りる気力と十九階層を踏破する気力が釣り合うという事態に苦笑いしつつ、ナチュルの渾身の魔法で最後のモンスター網を切り抜け二十階層へ。
「ようやく着いたわね……バックパックがはち切れるくらい掘ってやるわよ」
額に珠のような汗をびっしりと浮かべるナチュルだけど、その顔は冒険者でもなく鍛冶師でもなく、ただの炭鉱夫である。【ヘファイストス・ファミリア】は鍛冶師だけのファミリアとして知れ渡っているが、世の中に渡っているヘファイストスのロゴが刻まれている武具たちは全て上級鍛冶師が作り出しているものだ。上級か否かで別つのはステイタスの発展アビリティに【鍛冶師】があるか否か。発展アビリティ発現の条件はランクアップ時なので、上級鍛冶師は最低でもLv.2以上の冒険者でもある
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