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ダンジョンに出会いを求めるのは間違っていた。
第十一話
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させる風を空気に散らしたアイズは、薙刀を構えた格好で固まっている私を見ると、少し慌てたように剣を腰に戻して両手を小さく挙げた。

「私は、敵じゃない」
「あ、ごめん、びっくりして固まってた」

 焼付け刃の口調はあっさりと剥がれ落ちて素で返してしまった私は、そのミスに自覚することなく刃を一振りして血を払い落として構えを解く。
 アイズは挙げた両手を下ろすと、ふっと小さな笑みを咲かせた。

「口調」
「……あっ、ごめんなさい」
「ううん、私はさっきの方が良い」
「……大丈夫かな」
「ベートさんがいないときだけは」

 無理やりですます調に変えていたのはとっくにばれていたらしい。まあ、初めて会ったときにベートに向かって傲岸不遜な態度を取ってたからバレバレか。誰にでも一貫してですます調にする予定だったけど、アイズだけのときは例外的に元の口調に戻すことになっちゃった。果たしてそんな器用なことを続けられるのか、とも思ったけど、そもそも彼女とはファミリアも違うしレベルも違う。会う機会もそんなに無いだろう。

「レイナさん」
「あー、じゃアイズもさんは無し」
「──うん、そうする。レイナ、さっきの戦い見てた。凄いね」

 私の勝手な見解だけど、アイズってそこまで感情の起伏とか口数は多くないと思ってる。アイズの静謐さが表に滲み出ているせいか、快活さや気安さというものが感じられないのが原因かも。
 そういう意味でも【剣姫】と呼ばれているのであろうアイズだが、今は心無しか頬が赤みを帯びており、両手は軽く握られている。さっきの私の拙い戦い方に彼女の琴線に触れるものがあったのだろうか。

「まだまだだよ」
「神の恩恵ファルスも無いのに、Lv.2のトロールをあしらってた」

 ……そういえばそんな設定だったんだっけ、【ロキ・ファミリア】の中での私。誰も見てないのを良いことにあんなアグレッシヴな三次元的戦闘をやってたけど、あれってぶっちゃけ少しのステイタスがあるかないかで成否が別れるからね。Lv.1の序盤でも武器を十分振れる程度の力って普通に考えれば大の大人と同じような腕力か、それ以上だ。間違っても十三歳の少女が何の手助けも無しにトロールの巨体をよじ登れるはずがないし、飛び降りて無傷でいられるはずがない。

 その点不自然だったはずだけど、アイズは天然なのか気付いていない。あ、いや、違うな、ステイタスに慣れ親しんでるせいで生身の感覚を忘れちゃってるのか。それなら納得だ。

「偶々思った通りにいっただけ」
「でも、やっぱり凄い」

 あー、アイズが若干前のめりになって褒め称えてくる理由が何となく解ってきた。
 つまり、ステイタスに全く頼らない戦闘というものが彼女にとって目新しいものだったのかもしれない。実はそんなことはな
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