第十一話
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リートに飛び出して対峙する。
今まさにショーウィンドウから突撃しようとしていたところを真横から転がり出てきた私を見て、トロールは屈めていた体を起こし己の得物に舌を這わせる。あたかも自分の武器の方が優れていると言わんばかりだ。
残念ながらその丸太のような棍棒よりこの薙刀の方が優れてるんだよなぁ……。
初めて握り込まれたらしい柄は初々しい強張りを見せるが、心配は要らない。なるべく傷ませずに返せるように頑張る。私から見たらこの薙刀を手に取るのは問題ないように見えるけど、傍から見ると騒動に乗じて窃盗を働いてるようにも見えるからね。ヘファイストス様のロゴが入った武器の弁償とかどんだけ掛かるかちょっと想像したくない。
さて、勝っても負けても地獄を見そうな展開に自ら突っ込んでいくスタイルを見せ付けつつ、巨体のトロールと武器を突きつけあって対峙する。改めて見ると大きいな、トロール君。前世の私に勇気を与えてくれていたステイタスが無いせいか、敵の威圧感が鮮明に感じる。
しかし侮るなかれ。私とてステイタス頼りにハチャメチャしていたわけではない。むしろその逆、ステイタスなんて宛にしない方が良い、無いより有ったことに越したことは無いという心構えだ。私はLv.10になって中盤までずっと格上のモンスターとしか戦ってないからなぁ、それもソロで。皆がパーティ組んで戦ってる隣でボコボコにされながら足掻いてる私ってェ……。
『うごご……』
あ、何かトロール君が気遣うようにこちらを見つめている……。ゴメンね? 襲い掛かる機会を奪っちゃうような話をして。その理論に則るとこのトロールは私の脳内をのぞき見ることが出来るという反則をしているわけだけど、まあいい。
「さぁ来い!!」
『ウガアアアアアアアア!!!』
緩みかけた緊張の糸が再びはち切れそうになるまで張られた。今日一番の雄叫びを上げたトロールは愚直にその必殺の槌を振り下ろす。ただし、レベルが一つ違うだけでも甚大な差が出てくる。根本的な基礎能力に差が出てしまうだけで否応なく私が不利になる。
その差を埋めるために、一体何が必要か。答えは、知恵と経験だ。
力任せに振るうせいか些か精度に欠けるトロールの棒術は、ギリギリまで引き付けて衝突する直前で一気に体を沈めてやり過ごすのがベストだ。いくら愚鈍のトロールと言えど、振るう直前から回避行動を見せられれば大雑把な軌道修正くらいしてくる。その大雑把な軌道修正には人間のような合理性や精密さが欠けているせいで、逆に安定した回避が難しくなる。
だからミスったときを想像するとぞっとするものがあるけど、引き付けて回避さえ出来ればこっちのものだ。
ぶぅん!! と豪快に振りぬかれた鉄槌を追うように暴風が吹き荒れる。その風圧にステイ
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