第十一話
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じで、モンスターも私たちの顔を見分けることが出来ないはずだ。ゆえに特定の人を狙わせることはかなり厳しい。余程の特徴が無い限り不可能に近い。
まあ事態が起った原因は後ほどじっくり言及するとして、今はとにかく乗り切る算段を付けなければ言及することすらできない。
私は闇雲に東メインストリートを走っているわけではない。メインストリートと呼ばれるくらいなのだから、当然様々な雑貨品を扱う店も軒に並ぶわけで、今はお祭りの雰囲気に当てられて食品系の店が多いものの、この都市の真骨頂たる冒険者をターゲットとした店も負けず並んでいる。
その店のどこかに、武具店が絶対にあるはずだ。それを血眼になって探している。武器さえあればこの状況も何とかすることができる。それが正であれ負であれ、このまま逃げ続けていればレイナの未熟な体に疲労が蓄積し、抵抗すらできず石畳の染みにされてしまう。
並ぶ店たちの更に向こう側、もう一つのメインストリートからも悲鳴と土ぼこり、モンスターの怒号が迸っている。おそらくベル君だ。彼もまた私と同様、謎の執拗さを持ったスルバーバックに追い回されているのだろうか。少なくとも私より敏捷は高いはずだけど、到達階層が七階層の彼からしてみれば十一階層に出現するシルバーバックなんてミノタウロウスと似たようなものだ。ろくな抵抗手段すら思いつかず、とにかく逃げ惑っているに違いない。
せめて私が代わってやれたら……と何度目か解らない思考を打ち切り、振り上げた視線に映りこんだのは炎を思わせるような真っ赤な塗装がされた大きな店。その軒先に下がっている看板には《?φαιστο?》という奇怪なロゴタイプが施されており、それは世界で最も名高い鍛冶師たちが集うファミリアの主神の名前でもあった。
「感謝します、ヘファイストス様……!!」
右目を眼帯で覆った男装した麗人を脳裏に思い浮かべあらん限りの礼意と謝意を述べて店の中に飛び込む。当然中には客どころか店員すらおらず、店に並ぶ鍛冶師たちの傑作たちが無言で佇んでいた。
数多の業物たちが並ぶ陳列棚にすばやく目線を走らせ、欲しい得物を瞬間的に吟味し、迷わず掴み取った。
私の身の丈ほどある長い柄の先に純白色の白刃が輝く。柄尻には目立たない程度に皮がなめされており、赤いラインが柄を螺旋状にとぐろ巻く。
極東と呼ばれる国発祥の全武器種最長のリーチを誇る薙刀である。槍と似た構造をする薙刀だが、その実全く違う性質を持つこの武器は前世で最も慣れ親しんだ武器の一つだ。白刃にも《?φαιστο?》のロゴが刻まれており、この薙刀が世界に稀にみる超が付く業物であることを証明していた。
柄尻に付けられていた0の数が気持ち悪い程並ぶ値札を強引に千切り取り、トロールがヘファイストス様の支店に突っ込む前にメインスト
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