第十話
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数え切れない老舗が通りのど真ん中や隅に並び、香ばしい匂いやじゅうじゅうと何かを焼く音が盛んに振りまかれている。通りそのものはリボンや美しい花を始めとする様々な装飾がされていて、常日頃より一層華やかさが増している。頭上には【ガネーシャ・ファミリア】のエンブレムが施された旗が沢山紐に通されて風に揺れている。
数歩先に進むだけでも苦労しそうな大通りはがやがやと喧騒に包まれて、言葉の端々に怪物祭という単語が飛び交う。民衆たちにとって今回の祭りというのは楽しみの行事の一つのようだ。
人々の熱気にやられながらも私はゆっくりとメインストリートを歩いていった。
◆
やはり来たわね。少し目を離した隙に私の物ベルに近づいて、あろうことか彼の官能的な色までも穢そうと……。到底許されることじゃないわ。
そうね、丁度ベルに試練を与えるところだったし、ついでにあの女の今の実力を検証してみるのも良さそうね。本当にクレア・パールス本人ならば前世のステイタスを引き継いでLv.10のままでしょうし、否であるなら過去の偉人に似てしまった己の運命を呪えばいいわ。
すでに私はあの女の現状を調べてある。レイナ・シュワルツ。オラリオから少し離れた辺境の土地の地主の家庭から生まれた子供とされている。十三歳になってオラリオに来て、担当のアドバイザーを言い負かして冒険者に就職、以後アドバイザーの前に現れていない。ファミリアは無所属。
まあ、このレイナという子がクレアならば、このオラリオに来た理由は間違いなくセレーネと再会を果たすためでしょう。ところが現在では行方不明のため再会叶わず、何を思ったのかダンジョンにほぼ一日潜り続けている。
はぁ、あの女の考えることはよく解らないわ。一見したら全く合理的じゃないのに、いつもきちんとした結果は出している。もし私に観察されているのに気付いて私を撹乱させるためにしているのなら大したものね。あの女に限って十中八九無いでしょうけど。
それによりにもよって今日だけダンジョンに行かないで闘技場に向かおうとしているし、全く嫌になっちゃうわ。いつもの通りダンジョンに引き篭もってマゾい修行でもしていれば良いんだわ。
ならその修行の成果、見させてもらおうかしら。確かガネーシャの所にはトロールのようなLv.2以上のモンスターがいたわね。それを使いましょう。
「よぉー、待たせたか?」
手を挙げ気楽に声を掛けてきた神物に浅く笑いながら思考を回し続けた。
◆
「ごめんなさいね」
ロキに呼び出された後フレイヤはベルの姿を見つけ、レイナと合流される前に試練を発動すべく、闘技場で待機させられているモンスターが閉じ込められている西ゲート奥に来ていた。
フレイヤは崩れ落ちた女性警備員をその場に置い
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