第十話
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ねぇ……。えぇ、私が見た感じだと一昨日の二〜三倍強くなってる気がします。
さすがに直接ステイタスどんぐらい? とは聞けなかったけど、彼自身も思わぬ成長スピードのようで昨日のどんよりした雰囲気は嘘のように短刀を振るっていた。
ちぇー、どうせ私は平凡ですよーだ。いじけながらその日はベル君と一緒に七階層で留まって隣で槍を振るってました。【撥水】はする気になりませんでした。ちくしょん見てろよすぐに……無理ですね。カンストするだけでも異常な時間が掛かるのにランクアップ無しとか辛すぎぃ……。
さすがに同僚とこんなに突き放されるとは思ってなかった私はよよよと涙を零しながら一日中ダンジョンに篭って十四階層まで潜った。
その次の日である。
「あー、怪物祭ね……そんなの近々やるとか聞いたっけ」
自分のステイタスの割に合ってない戦闘をほぼ一日中行ったせいかレイナの体に【自然治癒】の回復が付いても追いつかないほど疲労が蓄積していたらしく、宿から目を覚ましたら朝九時前だった。
半開きした窓からわいわいと今にも踊りだしそうな声々が大通りから溢れていた。東のメインストリート付近にある宿を使う私は鉛のように重い頭を引きずるようにベッドから這い出て、もっさりした動作で身支度を整えていく。
今日はダンジョン潜るのやめようかなー、とまだ眠気が跋扈する瞼を擦りながら思う。前世ではこんなお祭り無かったからね。一年に一度らしいし、少し覗くぐらいはしてみようかなぁと考えてたりする。
何でもダンジョンから引っ張り出してきたモンスターを闘技場で調教するらしい。観衆たる一般人にとってこの上なく凶悪なモンスターを華麗に捌いてみせる冒険者に興奮して我先にと足を運ぶ催しなんだそうな。
私としてはダンジョンから出てくるモンスターを留めるのがバベルの役目なのに、冒険者自ら引っ張り出してきて大丈夫なのかが気になるんだけどね。まあ調教するくらいなんだし、余程の腕前を持つ冒険者が担当するはずだから事故は起らないように細心の注意を払ってるでしょ。
そんな建前は置いといて、本音はやさぐれた心を鎮めるためです。私はこういうときだからこそその気持ちを糧に頑張るべきだと思うけど、セレーネ様にこういうときだからこそいったん落ち着いて休憩してみるべきだと教えてもらったからそうするつもりだ。事実それを教えてもらった年から成果が如実に上がり始めたからさすがセレーネ様といわざるを得ない。
幸いここ数日で資金は結構温かいことだし、このお祭り雰囲気に酔いながら服とか買おうかな。セレーネ様と一緒に出かけた日々を思い出す。
顔に冷水をばちゃばちゃ掛けて眠気を払った私は早速宿を出て闘技場がある東端に続くメインストリートに出た。
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