第九話
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るたびにバッグ下ろして戦って、戦利品は無視して進んでまた戦って……。ちゃんと後先考えて戦いましょうねー私ー?
仕方ないじゃないか……前世では私以外潜れない深層まで潜ってたから、見かけた安全地帯に持ちきれなくなった戦利品を放っておいて、次に潜りなおしたときに持って帰るってスタイルを続けてたんだから……。もちろんサポーターは付いてない。というか、付いてこれるサポーターがいないから付けられなかったというのが正しい。
げんなりしてもやらないと食費無くなっちゃうからやるんですけどね?
それから更に一時間掛けてようやく六階層まで戻ってこれた時だ。
『らあああああああああああああ!!!!!』
詳しい時間は解らないけど真夜中であるのは間違いない。六階層という微妙な階層に留まる冒険者なんて皆無と言っていい。ゆえに、肌寒いほど閑散とした無機質な廊下が延々と続くこの階層全体に轟いた雄叫びを聞き取るのは容易だった。そして、その雄叫びに含蓄されたあらゆる激情を察することも、その雄叫びが誰の物なのかも。
「……これは、少年の……?」
記憶が脳裏にひっぱりだしてきた映像には白髪に赤目、だけど纏う雰囲気は兎といった愛嬌のある風貌をする少年。だけど、私はそれをすぐに否定する。さっきも言ったとおり、今は真夜中、それもとっくに三時を過ぎている頃合だ。そんな時間までダンジョンに潜っている─もしくはこんな時間から潜っている─のは、あの見た目からは考えられない。
しかし、これほどの激情を思いの丈叫べる空間といえばこの機以外中々ないのも事実。証拠に、最後彼とすれ違ったとき猛烈な勢いでダンジョンに走りながら涙を落としていた。無きにしも非ず、そんなところだ。
「少し覗いてみようかな」
【自然治癒】があるから疲労はそこそこ止まりだけど、体は十三歳のままだから眠気が半端無い。それに気づけないほど熱中していたと思うと己の愚鈍さに苦笑いが零れるけど、それが死線を共に潜り抜けた名も知らない少年を見過ごす理由にはなり得ない。
雄叫びの根源まで辿り付いた時、私は堪らず背負っていたバッグを落としてしまった。
やはり兎の少年だった。でも、その格好があまりにもおかしい。まず、無装備。私服とすら言えるほど軽装だ。服はモンスターの爪や牙が掠めた跡が幾つも走っており、右手に握っている申し訳程度の短刀を無数の怪物の血を滴らせて、天井に向けて瞑目する姿は幽鬼なれど己の虚弱さを嘆く勇者のように見えた。
彼の足元に広がる血溜まりは、彼の心から抜け落ちた熱血のようで、失血した分激しい虚脱感に襲われているのかもしれない。
そして、妙に際立った感覚を持て余していたのか、数十m離れている私にふいに目を合わせた。
やはり、その瞳
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