第八話
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ぐそこにいたらって」
オッタルの言葉から被せて放たれたその言葉の意味を、オッタルはすぐに理解することはできなかった。訝しむ顔を隠せない配下にフレイヤは妖艶な笑みを浮かべて言った。
「私も確信を持てずにいるのだけど、その亡き存在がすぐそこにいるかもしれないのよ」
「……と言いますと、クレア・パールスそのものがこのオラリオにいる、そういう意味でございましょうか」
「多分、ね。でも間違いないと思ってるわ。あんな虫唾が走るような色を放つ人間なんて、そうそういて堪るものじゃないわ」
フレイヤが何を言わんとしているのかようやく解ってきたオッタルは、その意を汲んで言葉を返す。
「では、如何程にいたしましょう」
「察しが良いのは助かるわ。でもまだよ。あの女がどういった状況にいるのか確かめてからじゃないと、後々面倒だわ」
「出過ぎた真似を」
「いいえ、鬱憤を晴らすために使って悪かったわ」
「お望みとあらばいくらでも」
頼りにしてるわ、と言い自分の意識から眼下の少女以外のものを全て排除する。
オッタルにはまだと言ったが、それは本当にまだまだ先の話になりそうだとフレイヤは黙考する。確かにあの女は自分の目に障る存在だ、しかし、あの女から見て自分は邪魔な存在だと思われていないはず。ならば、いつかその力を利用させてもらう日が来るかもしれない。主に、自分に嫉妬してちょっかいを出してくる女神を始末する時か。
それにさっきも言ったように、あの少女がクレアと同一かどうか解らない。仮に同一だとするならば所属しているファミリアは【セレーネ・ファミリア】のはず。神の恩恵とはその者の魂に刻み込むサインのようなもの、ならば、その魂が一致していればその恩恵も消えない道理。
自分の視線に気づいた少女が、自分に振り返る。向こうからはフレイヤの姿は見えないはずだが、その目は確かに確信を持っていた。
(セレーネ……)
五十年ほど前にあの女神が引き起こした不変の変異、クレア・パールスかそれに準ずる魂を持つ少女の出現。
当時はまるで解らなかったことが本当に少しずつ、フレイヤの中で氷解していった。
◆
さて、途中からフレイヤ様の視線が消えたことで、ようやく心置きなくすることが出来るよ。
「【愛情の証】」
一番安い宿の一角、私はベッドに腰掛けて自分の胸に手を当てて呟いた。その途端、私の背に刻まれている神聖文字が熱を帯び、灯りが落とされて暗がりになっている部屋に仄かな光が照らされた。
同時に、私の頭の中に次々と情報が流れ込んでくる。これが経験値なのか、セレーネ様から聞いていたものはもう少し漠然としたものだったんだけど、自分の経験値を自分で除いている分実感しや
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