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ダンジョンに出会いを求めるのは間違っていた。
第七話
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!? あん時のスライム野郎!?!?」

 待って、その渾名はいつ付けられたの?

「なんやベート、この子と知り合いなんか」
「知り合いも何も、コイツ……!!」

 びきりと青筋を立てて吼えた。

「さっき話したトマト野郎と一緒にいた奴だ!!」

 ……私、もう無名のまま活動できないかもしれない。



 《豊饒の女主人》はこれまでに無い異様な雰囲気に包まれていた。ここら一帯の中で最も大きい規模を持つ酒場らしく上機嫌な大声や雑踏が店内を引っ掻き回す中、この酒場の常連である【ロキ・ファミリア】の面々が囲むテーブルの一角にぽつんと、身をこじんまりとさせた少女が座らせられていた。

 流麗な黒髪がチャームポイントの少女は【ロキ・ファミリア】のメンバーではない。ゆえにメンバーから寄せられる目線に痛覚が伴っているかのように、少女は居心地悪そうに身を捩る。
 
 アマゾネスの少女二人は己の主神が見初めた人物がいかほどの者か物色し─姉の方はなぜか敵視するように睨んでいたが─小人族の青年は酒の酔いで顔を紅潮させてしゃっくりまでする様だが確かに少女を見ており、エルフの少女はこてんと首を傾げて、同じくエルフの絶世の美女は主神がまたやらかしたかと額に指を添え、ドワーフの老兵は蓄えた剛毛の顎鬚を撫でながら主神の言葉を待ち、狼人の青年は仇敵を前にしたように牙をむき出しにして睨みつけ、ヒューマンの少女は変化に乏しい表情に僅かな戸惑いを混ぜて少女を見ていた。

 そして、それらを睥睨した朱色の神ロキはおほんと咳払いをひとつ払うと大々的に宣言した。

「こちら、ついさっきうちがナンパして仲間にしたレイナたんでぇーす!!」
「いえ違いますロキ様」

 凄まじい反応速度で神の宣言にツッコミを入れた少女は僅かに引きつった頬を隠す余裕もなく言葉を続ける。

「というか、何で私がこの場に……」
「おいスライム野郎ッ!」
「何で私はその渾名で呼ばれてるんですか!?」

 ガルルと唸り声が聞こえそうなほどメンチを切るベートに、こちらもすかさずツッコミを入れるレイナ。
 ちなみにスライム野郎の由来は当然例の一件から来ており、裏を返せばベートが完全に自分の拳を避けられたと認めたからに他ならない。

「なんだテメェのこのこ俺の前に来やがって! 嘗めてんのかコラァッ!?」
「私も不本意ですよ!? ロキ様が勝手に私をメンバーにすると言って聞かなくて──」
「そもそもなんだその口はッ!? 初対面のときのあのクソ嘗めきった口調はどうしたんだよアバズレ!!」
「その件は本当に申し訳ありませんでした! 過ぎたマネをしていたと反省しています!」
「おう、意外と素直じゃねぇか。スライムの癖に殊勝なこった」
「(結局罵倒されるんですか……)」

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