第五話
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。でも無視とも言えないものでもあった。
「そういうことらしいので、私はこのへんで」
助けてくれてありがとう、と改めて謝辞を述べて歩き去ろうとする少女に、思わずアイズは声を掛けた。
「あの」
「ん?」
「その、今回の原因は、私たちのファミリアにあるから、少し待ってくれれば送り届けられる、けど……」
普段から口数が少ない弊害で、口調が語尾に向けてたどたどしくなっていく。言いたいことをスマートに伝えられないことにアイズはもどかしさを覚えた。
ミノタウロスの一件に巻き込んでしまった少女に純粋な謝意として、代わりに護送を申し出たのは、この第五階層という場所は駆け出し冒険者がソロで切り抜けるには厳しい環境だ。さっきの少年に置いてけぼりを食らった彼女は余計辛いかもしれない。そういった思いで提案した。
対してベートは、つい五秒前に自分が言ったことを右から左に流しているアイズに煩わしさを覚えるが、少なくない想いを寄せている相手でもあるので表に出すのを努めて押さえ、「あのな」と言おうとしたが、駆け出しの少女の即答に遮られた。
「大丈夫だよ。気遣いありがとう」
少女は呆気なくアイズの提案を断った。ミノタウロスに追い詰められた直後とは思えないほど飄々と返答した少女は改めて翻そうとしたが、その襟をベートが荒々しく掴んだ。
「おい、雑魚」
下級冒険者にかかずらうなと注意をしたにも関わらず聞き入れてもらえず、更には最高峰の探索系ファミリアたる自分たちで雑魚の護衛をしなければならないと思ったときは、さすがに舌打ちを零した。が、それは極々小さなもので、ステイタスによって強化された五感を持つアイズですら聞き漏らしたほどのものだった。それが、ベートが感じた苛立ちの多寡であった。
しかし、その直後の少女の返答が、多少荒立ったベートの神経を逆撫でした。もちろん少女にそういう意図は全くなく、単純にそこまでしてもらうのは悪いと思って断っただけなのだが、ベートの捉え方は違った。
何だ? その馴れ馴れしい態度は。格下の雑魚が俺たち上級冒険者と同等だとでも思っていやがんのか?
つまり、実力至上主義の矜持に泥を塗られた気分なのだ。確かにヘマを出したこっち側にも非があるのは認めるが、そもそもお前が強ければミノタウロス程度簡単に処理できたし、そもそも助けてもらった分際でさっきから態度が軽薄、加えてこっちがわざわざ雑魚のお前のために提案したのをそんな軽々しく却下するとは、一体全体お前は何様なんだ?
あまりにも身勝手な言い分ではあるが、確かに冒険者の業界の中では下級冒険者は上級冒険者に敬意と畏怖を寄せるのは暗黙のルールで、それに従わずに洗礼を受けたのならばそれはそいつが悪いという共通認識がある。
その認識をこの上な
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