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藤崎京之介怪異譚
case.1 「廃病院の陰影」
 epilogue〜同日 pm3:36
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か…?」
 僕はムッとして言ったが、二人とも少しして吹き出してしまった。
「さて、もう行くよ。今度はこんな騒動じゃなく、ゆっくりしたところで話したいものだね。」
 天宮氏はそう言うと、早々に立ち去ってしまった。
 さて田邊君だが、急ピッチで作業を指示しているが、もう大半は片付き、一部は運び出されるに至っていた。
 組み立てるより、解体する方が簡単なようだ。
「先生、後は専務が来てくれるそうなので、僕達は戻りましょう。」
 そう言って田邊が俺のところへやってきた。
「そうか。じゃ、後は任せて帰るとするか。」
 田邊を助手席へ乗せると、俺はそのまま車を走らせた。
「ねぇ、先生。人の想いは、いつまでも残るものなんですかね…。」
 暫くしてから田邊が聞いてきた。
 俺は少し考え、静かに答えた。
「そうだな…、きっと永久に残って行くものじゃないかな…。全ての人が忘れ去ったとしても、純粋なものであればあるほど、それはこの自然や宇宙のどこかで、静かに輝き続けてるような気がするよ…。」
 それきり俺達は、何も話さなかった。

 夕陽が紅く染め上げた空に、夜の藍が重なって行く。
 見れば、あちこちに星々の光が点々と見え始めていた。
 理由の掴めなかった事象もあったが、何となく、それはそれで良い気がした。

 俺は星の瞬きに想いを馳せる。
 きっとあの星のように、あの二人の想いは輝いていたに違いない。

 今も…きっと…。



     case.1 end




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