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藤崎京之介怪異譚
case.1 「廃病院の陰影」
V 同日 pm.8:45
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「自殺…。この古ぼけた報告書には、そう記入されているがね。真実は闇の中だよ、藤崎君…。」
 電話の向こうで、天宮氏が嘆息しているのが窺い知れる。
 こんなことさえ起こらなかったら、この機密資料を発掘することもなかったのだ。
 いや、それを発掘させるために、わざと英さんを…?
「ああ、もう一つあったんだったな。」
 再び天宮氏が話し始めた。
「君の推察通り、あの廃病院の周辺で行方不明者が出ている。殆んどが浮浪者だが…。なぜ分かったんだ?」
 俺の予想は的中していた。これだけ知ることが出来れば、もう申し分無いと言えるだろう。
「ただの推測ですよ。天宮さん、本当にありがとうございました。これで解決出来そうです。」
 後はこちらで準備を進めるだけだ。ことは急を要するだけに、手配をスムーズに行わないとならない。
 電話口で天宮氏が、未だ心配そうな口振りで行ってきた。
「いつ行うのだね?」
「明後日の21日です。」
 俺は天宮氏に即答した。
 天宮氏は暫く考えて、僕にこう言ってきた、
「私も出向くことにする。だが、同日の朝になるがね。」
 歯車が回り始めた。
 悪夢の連鎖を断ち切るため、俺達は出来ることをするだけだ。
 俺は天宮氏との通話を終えるとすぐ、合唱指揮者の田邊へと連絡をとったのだった。
「もしも…」
「先生、こんな時間に電話なんて…。また巻き込まれたんですか?」
 第一声がこれだった。
 田邊とは長い付き合いで、俺の副業も知っている。序でに、団員も全員知ってるんだが、その話をすると俺の機嫌が悪くなるため、誰も話はしない。暗黙の了解というやつだな。
「で、今回は何を?」
 こちらが未だ何も話していないのに、田邊は直ぐ様内容に入った。かなりご機嫌斜めなご様子だ…。
 俺は気を取り直し、田邊に言った。
「モテット全曲だ。」
 そう言うと、田邊は「はぃ?」と間の抜けた返事をしてきた。
「先生、新年用や追悼式用まであるんですよ?いくらなんでも全曲なんて…」
 彼はそう言ってきたが、俺はその言葉を切って言った。
「それは分かってるさ。それと、今回は君が指揮してくれ。」
 少しの間、沈黙が続いた。そして…。
「先生、僕はいわば副指揮者なんですが…?」
「悪いが、今回俺はことの中心へ出向かないとならないんだ。外で指揮をしてもらわにゃ困るんだよ。」
 田邊は仕方ないと言った風に嘆息し、「分かりました。」と言ったのだった。そして立て続けに、俺に聞いてきた。
「それで、今回もうちのを呼び寄せますか?それと、理由はどうするんです?場所によりけりですけどね…。」
 あぁ、何か投げやりっぽくなってるな…。ま、いざというときは役に立ってくれるやつだ。
「勿論、今回も手伝ってもらいたい。場所は、あの有名な廃病院だ。理由
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