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藤崎京之介怪異譚
case.1 「廃病院の陰影」
T 7.18.pm6:25
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ま視察に来ていた天宮氏が、それを見ていたのだ。
 その後、それが余程面白かったとみえて、僕の話が聞きたいと家へ招かれたのだ。
 まぁ…金はあるんだろうし、俺だってスポンサーがつけばマイナーな曲も録音出来るからなぁ。向こう様は面白い話が聞けて結果オーライって感じだな。
 そうこうしているうちに、ホテルへ着いてしまった。
「お帰りなさいませ、藤崎様。先程、お客様がお見えになりまして、あちらで藤崎様をお待ちになっておられます。」
 帰って早々客だと…?俺は顔をしかめ、フロントの男性に指し示された方を見た。
 すると…そこには、見知った姿があったのだった。
「あ、天宮さん!?」
 噂をすれば影がたつとはいったものだ…。
 俺が声をあげたもんだから、彼がこちらに振り向いた。
「やぁ、久しぶりだね!元気そうじゃないか。」
「こんなロビーで待たなくても宜しいじゃないですか!部屋の方で待っていて頂いても構わなかったんですが…。」
 天下の大富豪がロビーの端で人待ちなんて…。まぁ、以前からこうなんだがな。
 なんというか、かなり素朴な人なんだ。相手に気を使わせたくないようで、こうやって帰るまで待っていてくれたり、御中元や御歳暮んかに「返礼無用」と書いていれてみたり…って、こりゃ俺がやらなきゃいけないやつだな。
 とにかく、世話好きなオジサンと言えばいいのか?でも逆に、こっちが気を使っちゃうんだけどな。
 ま、良い方だよ…変わってるけど…。
「しかし、こんなとこまで何のご用件で?連絡頂ければ、こちらから伺いますのに…。」
 俺がそう言うと、天宮氏は困った表情を浮かべて話し出した。
「それなんだがね…。君、この市内にある廃病院を知っているかい?」
 なんだが嫌な予感がする…。
「え、えぇ…、知ってますよ。今日も団員達が噂話をしてましたし。で、その廃病院がどうかしましたか?」
「実はな、あの病院はうちの系列だったんだよ。十数年前に経営破綻して閉院したんだが…。
そこで近年、これを取り壊して公園にしようって話が出てな…。」
 何だか歯切れの悪い物言いだ…。この人が言葉に詰まることはまずない。と言うことは…言いにくい何かがあったのだろう。
「その病院で、何かあったんですね?」
 先を促すため、俺は天宮氏に問った。
 彼は渋い顔をし、場所を変えようと言ってきたので、俺は天宮氏と一緒に部屋へ向かった。
 俺に用意された部屋は上等なもので、テーブルにソファー、テレビに冷蔵庫まである至れり尽くせりの部屋だった。
 俺と天宮氏は、一先ずテーブルを挟んで腰を下ろした。
「すまんね、この忙しい時に…。」
「いいえ、天宮さんこそお忙しいはず。それを押してこちらに来られたということは、かなりのことなんでしょう。」
 やはり何かある。天宮氏がこ
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