第三話
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ってる奴いんのかよ』
『つか、幸せってなんだし。神様に向かって偉そうだな』
『田舎上がりか? それにあんなチビだし、世間知らずなだけかもな』
何、何だ、みんなは何を言っている? 何でセレーネ様がいないことを当然だとばかりに言っているんだ?
ひそひそと交わされる声は小さいはずなのに、私の耳は途轍もない大音量だとばかりに拾い集め、私の脳に伝えてくる。今、この世界のなんたるかを。クレア・パールスが世界から姿を消した約六十年の間に何があったのかを。
背筋に氷柱を差し込まれたような強烈な悪寒に何もかもが固まった私に、そのアドバイザーは憚るような態度で、しかし疑いようの無い事実を確かめるように、言った。
「セレーネ様は天界にお戻りになられたって噂だけど……」
◆
どうなっているんだ……。この呟きが一体何回脳内で反芻されたことか。エイナ・チュールと名乗ったアドバイザーに何とかお礼を述べた後、茫然自失の体でオラリオを彷徨い続けた。
私の記憶にあるオラリオの姿は変わっていなかった。ただ、表情をがらりと変えた。私の家は記念物になった。私が建てた冒険者指導設備は姿を消し代わりにアドバイザーというサービスが出現した。私が身を匿ってもらったボロアパートは取り壊されていた。オラリオ在中の神の名を綴った石碑にその名が消えていた。
そして、【セレーネ・ファミリア】の紋章が消えていた。
突如頭痛が襲う。トンカチで頭を何度も殴られているような激しい痛みは堪らず眩暈を引き起こす。座り込んでいた階段にふらつき、体を横に倒した。ここは人通りが少なかった。昔から変わらない人気の少なさが今の現状を嘲笑うかのようだった。
事実の認識をした瞬間から襲い続ける頭痛に盛大に顔を顰め、意味も無く額を押さえながら現状の整理に努めた。
まず、生ける伝説クレア・パールスは【セレーネ・ファミリア】唯一の団員だった。入団した当初は平均以下の成果しか上げられず群衆に埋もれていたが、あることをきっかけに急激に成長。そこから偉業の数々を打ちたて、果てた。
そこまでは良い。だが、そこから先が明らかにおかしい。
クレア・パールスが死去してから十年後に神セレーネはオラリオから姿を消した。理由は全く不明。オラリオにあった神セレーネの面影は完全に抹消されてあり、神々たちも事情を知らない。
意味が解らない。何て言うか、こう、もう全部が理解不能だ。唐突過ぎる。あまりに唐突過ぎる。そして周りはあまりに無関心すぎる。自分で言うのはおかしいが、私は一般的な目では数多の偉業成した伝説の冒険者だ。その冒険者が所属していたファミリアの主神に関心の目が行くのも当然の摂理だ。
何で私が死んだ瞬間にセレーネ様への関心がぶつりと途絶えるんだ? 唯
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