第三話
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伝説クレア・パールス死去より六十周年!』とでかでかと飾られており、記念すべき年なのでアイテムは何割引だとか武器はお買い得だとか書いてある。
称えられてこそばゆいのか改めて己の現状を認識してゲンナリするのか、中々複雑な心境である。何とも冒険者らしいと言うのか、ひとまず記念だと騒ぎたいだけなのかもしれない。それに神様が悪乗りした、と言うところかな。
緩みかけた意識を意図的に締めなおす。そう、神様。私の主神セレーネ様だ。この都市に来たすべての理由。まずセレーネ様を探さないと。
とはいえ、地下に無限に広がるダンジョンを全て押収したオラリオの土地面積は馬鹿げたくらい広い。その広大な土地にこれでもかと所狭しと立ち並ぶ民家に宿に店にギルド。
さて、ひとまず私が住んでいた家に向かってみますか。そこでセレーネ様が待っているかもしれない。
◆
着いた。シュワルツ邸を見慣れたせいで少し自分の家の全体像がおぼろげだったけど、ちゃんと自分の目で見るとあっさり自分の記憶に埋もれていた家が見つかった。
うん、変わらないね。私が住んでいた家、というより、その家が建っている土地を私の名で買収したから、その私が亡き今誰に譲渡されたんだろうと少し考えてたけど、まあ私の主神セレーネ様に献上されるはずだ。
そう、はずだ。でも、何度見直しても、私の前に立つ我が家は無情にも看板を掲げている。
『故クレア・パールス邸』
……何ぞコレ。少なくとも私が住んでいたころには玄関にこんな看板を立てた覚えは無いんだけど。というか、何で玄関の扉に立ち入り禁止みたいな紐が張られてんの? これじゃまるで世界遺産か文化遺産みたいな扱いを受けてるんだけど……。
私が眼前の現実に呆然としていると、たまたま通り掛かった冒険者と思しき数人の集団が活発に弾ませていた会話と足を止めて、一度私の家に向かって合掌し会釈、そして歩きを再開した。
……何ぞコレ。少なくとも(ry
待った。ちょっと待ってくれ。セレーネ様の住む家じゃないのか!? ま、まぁ超厳密に言えばセレーネ様とは血縁関係じゃないけど、それでも私の母だし、主神である以上譲渡される権利はあるはずだよね? それともアレか、セレーネ様はこの家を離れて違う場所に移り住んだとか? でも私の遺産の譲渡も上記の通りなら……。
んん!? こんがらがってきた。バカな頭を働かせるからそうなるんだ。いったん頭を空っぽにしよう。休憩は大事。セレーネ様が教えてくださった名句だ。あれ、でも脳みそはレイナのものだからむしろ頭は良いはずなんだけど……。
もうだめだ。自分でも無自覚なほどパニックになっているぞ……。オラリオに入る前に感じていた言い様の無い予感が顔を覗いてきている。そして私に向かって優しく微
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