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ダンジョンに出会いを求めるのは間違っていた。
第二話
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リオは魅力溢れる都市だ。世界の中心と言っても過言じゃない。何せ、その都市には本物の神様たちがいらっしゃるのだから。そしてその都市の地下に延々と伸びるダンジョンには未知という名の宝が満ち満ちている。僕も少年のときは冒険者になることを夢見たものだ。

 でも、世界の中心と言えるからこそ、それだけ魑魅魍魎の黒々とした不気味さが内側に潜んでいる。僕は直接確かめたことが無いから強く言えないけど、何でもダンジョンに飛び込む冒険者という人たちは神様から力を与えてもらい、ダンジョンの奥へ足を運ぶらしい。そして得た魔石を換金して生活費を賄うようだ。
 もうちょい色々と補足されるべき要素があると思うけど、一番目玉なのが、冒険者の死亡率だ。僕たち領主を初めとした世界の至るところにある職業を選ぶにあたって判断基準があるのは当然だ。一つは給料、一つは生きがい、そして身の安全。これらの内の最後を最優先事項にするのが普通だ。
 しかしその冒険者たちは構わないのだ。もちろん冒険者の中にも身の安全を第一にして臨む者もいるだろうけど、ダンジョンには奇怪なモンスターたちが蔓延っている。それも人なんて丸飲み出来てしまうほど大きいのもいるらしい。そんなのに挑むせいで、冒険者は殉職者が後を絶たない。最も死亡率が高い職業で堂々の一位を飾るほどなのだ。

 そんな場所に、まだ純粋無垢な娘を行かせるのは僕も妻も反対だった。まだ娘が冒険者になりたいと言ったわけじゃないけど、オラリオと言えばダンジョン、ダンジョンと言えば冒険者だ。少なくとも憧れの念は寄せていることだろう。

 今まで我侭の一つも言わずにお利口だったレイナが抱いた、たった一つの憧憬。歳を重ねた僕たちには無い、幼く豊かな感性は何を感じ取ったのだろう。そこからどんな世界を思い描いて、そこにいるレイナはどんな人なんだろう。
 愛娘が唯一夢見たこと。それは命を擲つに等しいものだった。親としては許すべきではない。だけど娘が密かに描いた夢を潰したくない。そのジレンマに僕と妻は何年も頭を悩ませて、何回も話をし合った。

 その結果、娘が切り出してきた時に許してやろうとなったのだ。

 もちろん生半可な気持ちで臨むようならば容赦なく止めるつもりだった。そんなことで若い命を散らせて欲しくないし、何より僕らの娘だ。僕たちが生きている間だけでも元気でいて欲しい。

 でも、レイナの目は本気だった。その夢を追いかける覚悟が備わっていた。僕にとって、それで十分だった。

「心配かい?」

 僕の肩に額を押し付け涙を濡らす妻に声を掛ける。是非も無く激しく頷く。僕の服を握る手に力がこもり、皺が寄る。レイナが家を出るまで、一体どれほどの言葉を彼女は我慢したのだろう。その想像は、彼女の手に詰まっている。

「なら、信じて待ってやろうじゃな
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