第二話
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良く解らないなぁ。ごちゃごちゃと書いてあって上手く解読できないや』
とのこと。まあすでに解っている通り、何故か私は前世のクレア・パールスの記憶を残して生まれ変わってしまっている。それに付随してなのか、生まれたその瞬間から物心が付いている状態だ。残っている記憶の半分以上がダンジョンで活動しているものだから、赤ちゃんの身だと何かともどかしいものがあった。
そうそう、今の私はクレア・パールスじゃなかったね。改めて自己紹介すると、今の私の名はレイナ・シュワルツ。音楽っぽくて可愛らしい名前だ。
幼いころに両親や兄弟、従兄弟に親戚の一切合財を失ってしまった私にとって、この家庭の温かさは心地のいいものだ。もちろんセレーネ様には一歩見劣りがあるけど。
でもセレーネ様の説明通りならば、本当のレイナ・シュワルツちゃんが宿るはずだった体を、私の都合によって横取りしてしまったことになる。それはあまりにも無慈悲なことじゃない?
重い罪悪感が芽生えるけど、もう戻ることは出来ないみたいだし、私が責任持ってこの体を幸せにしなければならないだろう。
◆
私が生まれてから一年くらい経った。
事態のほとぼりが冷め始めたころに気づいたけれど、クレア・パールスが息を引き取った時間からレイナ・シュワルツとして目覚めた時間までに、さほど差は無いらしい。
シュワルツ家に並ぶ家具を見ても大きく文明が進化したようには見えないし、食器や照明も目覚しい物があるかと言われれば全く否。
そして一番大きかったのは迷宮都市オラリオが存在する世界であること。実はこれが一番危惧していたことなんだけど、【転生】されるにあたって私の魂は一体どこに飛ばされるのかが不明瞭を極めていた。
セレーネ様にも相談をしたかったけど、そうすると私の死が近いみたいな誤解を与えちゃいそうで、一人で黙々と考えていた。さりげなく遠まわしに聞いてみると、死んでしまった人の魂は天界へ引き取られ、前世の記憶を消去して再分配するらしい。あまりにも抽象的な話だったから半ばくらいしか理解できていないけど、その再分配が行われるとき、時間軸を問わないみたい。
時間って縦と横の軸が組み合わさって成り立っていて、縦が年代、横が平行世界なんだそうだ。だから例えば人間が初めて生まれた瞬間に飛ばされる可能性もあれば、クレア・パールスが生きていた時代では考えられないような超次元の世界に飛ばされる可能性もあった。
つまり迷宮都市オラリオが存在しない世界に飛ばされる可能性が十二分に考えられたわけで、むしろ存在しない世界に飛ばされる確率の方が高かったはずだ。なぜなら、天界から下界を観察していたセレーネ様曰く迷宮都市オラリオが誕生した世界は、無限に広がる時間軸の中でたった一つしか存在しなかったからだそうだ。
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