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ダンジョンに出会いを求めるのは間違っていた。
閑話 第一話
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 かつて神たちが天界から下界に降りてきたのには理由があった。即ち、刺激だった。
 単純な話、不老不死の存在であっても決して逃れられないのは退屈である。無限の時を何して遊んでも良い神にでも、娯楽には限度がある。娯楽が尽きかければ飽きる。飽きれば不老不死が地獄として機能して神を苦しめる。
 
 その地獄から逃れるために、神たちは己の持つ力を捨てた。人間たちと同じ地位で、同じ能力で、同じ視点で、同じ生活を送る。それが、神たちが考えた娯楽だった。
 文化や感情を育む人間たちに暇などない。ならば自分たちも人間と同じになればいい。
 そして、その思惑は見事退屈を吹き飛ばした。下界は最高のゲームだと次々と天界から神たちが降りてきて住み着いた。そしてそのほとんどが永住することを決めた。一度天界から無断で抜けてしまえば帰りが怖いし、そもそも天界自体が彼らにとって地獄のようなものなのだから願い下げ。

 自由奔放な神たちの中に、セレーネはいた。

 正確にはセレーネが欲するものが天界になくて下界にありそうだった、だから降りた、である。別に暇が苦しかったという理由ではないが、天界に取り残され仕事を強制されている哀れな神たちにとっては良い迷惑なのは変わりない。

 セレーネが欲したものとは、家族だ。

 自分が心から愛し、共に生活を送る。そんな日常に恋焦がれていたセレーネは、次々と下界に飛び降りていく神たちに便乗して下界に降り立った。
 そして地に足が着いた、その次の日。目の前に身も心もボロボロになった少女が道で倒れていたのだ。
 服は汚れて破けており、顔も土まみれ、足も靴を履いておらず皮が向けていて、ただ大事そうに右手に僅かなお金を持って倒れていたのだ。

 その瞬間から、セレーネはこの子を助けてやりたいと思った。

 手元にあった有り金をはたいてまでもその少女を助け、自分が借りていたアパートに彼女の身を置いた。
 その日を終えて翌日の朝になってみると、クレア・パールスと名乗ったその少女は自分を助けてくれてありがとう、何も持っていない自分ですが何かできることはありませんか、と目に涙をためて体で感謝の意を表した。
 別に彼女から見返りが欲しくて助けたわけではなかったが、行き倒れていた経緯を聞いてみると、彼女の親類縁者が全員事故で亡くなってしまったそうではないか。

 私と別れた後、いったいこの子はどうやって生きていけばいいんだろう……。

 そう思ったとき、セレーネは自動的に自分の家族にならないかと誘っていた。
 それからクレアは【セレーネ・ファミリア】に入団して、言葉の通り受けた恩を返すために尽力することとなる。恐らくこの時、世界で初めて『冒険者になるために入団する』のではなく『家族になるために入団する』人が生まれたのだった。

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