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ダンジョンに出会いを求めるのは間違っていた。
閑話 第一話
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 クレアは恩を返すためにまずセレーネの生活を支えなくてはと考え、自分のような年端もいかぬ少女ができるようなお金稼ぎは何だと考えたとき、それが冒険者になることだったのだ。
 冒険者のイロハも知らないはずのクレアは冒険者になって以来、毎朝早く起きてダンジョンに向かい、夜遅くにボロボロになって帰ってきてステイタスの更新をして、泥のように寝た。
 最初のころセレーネは恩を返すために死にに行こうとしているのかと焦ったが、クレアが確固たる覚悟で「セレーネ様から命じられない限り、私は死にません」と断言してきたので不承不承ながらもクレアの努力を妨げなかった。

 無限の時間を自堕落に過ごしてきた神にとって、時間とは存在しないものにふさわしい。つまり、途轍もなく時間にルーズなのだ。だから少しでも意識を外してしまえば体感時間では一分だったとしても、他の人たちから見れば一日だったとかよくあることだ。
 それはセレーネにも同じことが言えた。今日見たときはあんなに小さかった少女なのに、気が付けば大人らしい体つきになっていて、瞬きをすればあんなに望んでいたLv.2になっていたり、まさに時間は飛び去っていったのだ。

 客観的にみればクレアに冒険者としての才能は無かった。皆無に等しい。しかし膨大な月日を全て報恩奉仕に捧げたことによって、才能を覆す努力を惜しまなかったことによって、数々の偉業を成し遂げ、遂には前人未到の領域にまで達した。
 そのどれにもクレアは喜んでいなかった。ただ、セレーネに喜んでもらえることが、彼女にとっての最大の喜びだった。その結果が偉業だったに過ぎない。
 
 当初クレアに見向きもしなかった神々はただの努力だけで偉業を成し遂げてきたクレアを改めて評価しなおした。でもそれはあくまで『結果』だけで、彼女の『努力』を評価したわけではない。
 数少ない理解者であるロキやヘファイストス、フレイヤはクレアのことを【不屈の奉仕者(セミヨン)】と呼んだ。客観的に見ればこれ以上ないほど正しい二つ名だが、セレーネにとってクレアは奉仕者ではなく娘だ。神会でその決定を覆せなかったのに甚だ遺憾を覚えた。



「まぁそう気にせんといてなセレーネ。レベルが上がれば名前を変える機会なんて何ぼでもあるんやで?」

「そうよ。レベルが上がれば公表されるし、貴女のファミリアに希望する人も増えそうじゃない」

 神会の帰り、(セレーネ)が特に親しいと思っている二人と共に寄り道をしていた。神が御用達する酒場なのだから余程高級なところだろう、と思うだろうが残念、私はそういうのはあまり好きじゃないから至って普通の値段の酒場だ。神としての能力を禁じられているとはいえ、神そのものの気質を失っているわけではないため、一般人とは別の部屋で行われているけど。


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