3部分:第三章
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ですが・・・・・・おや」
ここで彼は気付いた。間違えて二枚重ねにしていた。しかしその二枚目も全く同じ様に奇麗に引き裂かれていたのだった。一枚目と全く同じで。
「二枚でした」
「二枚か」
「では二人分じゃな」
村人達はそれを聞いてわかった。何故二人が助かったのか。
「あんた、それ何処で貰った?」
「江戸でです」
村人の一人の問いに対して答えた。
「江戸で占い師に貰ったのですが」
「そうだったのか。それではだ」
「それでは?」
「それで助かったのじゃよ、あんた達は」
こう仁八だけでなくお淀に対しても言うのだった。
「これで助かったって」
「じゃあこのお札が身代わりに」
「そういうことじゃな」
村人の中で最も年輩の一人が二人に告げた。
「それで助かったのじゃよ」
「そうだったのですか」
「お札で」
「それでじゃ」
その年輩の村人はここで仁八に対して問うてきた。
「あんた、何と言われて貰ったのじゃ?」
「はい、これを持っていれば連れの者が助かると」
江戸でその占い師に言われたことを思い出す。
「そう言われて貰ったのですが」
「貰ったか。それはまた」
「それはまた?」
「運がよかったというべきか運命だったと言うべきか」
彼は首を捻りながら言うのだった。
「どっちにしろよいことじゃ。難を避けられたのじゃからな」
「そうですね。それでは」
「助かった命じゃ。大事にするといい」
また仁八に告げた。
「折角じゃからな」
「わかりました。じゃあ」
「仁八さん」
お淀がそっと仁八に声をかけてきた。寄り添うようにして。
「じゃあこれからも」
「そうだな。折角二人して拾った命だし」
「宜しくね」
「しかし。本当によいことじゃて」
「全くじゃ」
村人達は難を逃れてそっと寄り添い合う二人を見て言い合う。
「鬼から逃れることができたのじゃからな」
「その分だけ幸せになれるわ」
二人を見て言うのだった。その二人は京に戻ると夫婦になり仲睦まじく暮らしたという。しかしそれまでにはこうした思いも寄らぬ危険がありそれを避けられた幸運もあった。世の中何がどうなるか本当にわからない。危機もあればそれを救う神も仏もいることであろうか。
裂かれた札 完
2008・5・30
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