2部分:第二章
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第二章
「それではわしと同じではないか」
「あなた様とですか」
「実はわしもそうじゃ」
そうお淀に語るのだった。
「用事でこの江戸に出ていてな。それで戻られると」
「その通りだ。今からな」
「では道が同じですね」
「そうだな。しかし」
ここで彼は親切心を抱いたのだった。やましいところはなかった。
「女が一人というのは危なくはないか」
「それはまあ」
これを言われるとお淀も女だ。思い当たるところはあった。
「江戸までの道でも何かと怖そうな場所がありました」
「泰平になったがそれでも盗人の類はまだいるからな」
随分と減った。しかしそれでもいることはいるのだ。ましてや家光の時代はまだ泰平になって間もない。そうした物騒な事柄がまだ残っていたのだ。
「どうだろう。京までわしが一緒に帰ろうか」
「京までですか」
「御主も京であろう?」
このことを念押しする形で尋ねる。
「それならば。無理にとは言わぬが」
「そうですね。それでは」
お淀も仁八の言葉に頷く。これで決まりであった。こうして京までの道中二人で共に帰ることになった。仁八もお淀も互いに快く話を交えつつ朗らかに京にとのぼる。二人は話せば話す程仲がよくなり何時しか兄妹か夫婦の様になった。何かあれば飯を分け合い互いに寄り添って道を進んだ。
その中で。ある日のことだった。もう宿に入る時間になったが残念なことにそこは道中であり宿場町は遠かった。そのうえもう完全に暗くなってしまっていた。
「さて、これは弱ったぞ」
仁八はすっかり暗くなってしまった辺りを見回して途方に暮れた声を出した。
「幾ら何でもこの辺りで休むわけにはいくまい」
「全くです。しかし」
お淀も辺りを見回す。しかし道中には人っこ一人いない。いるのは二人だけなので余計に心細かった。そこに烏の鳴き声が風に吹かれた草木の音がして寂寥をさらに増していた。
「このままでは」
「野犬でも出たらことだな」
仁八はそのことを心配した。このままでは自分はともかくお淀が問題だ。そう思って心配したのだ。それで周囲を見回して言うのであった。
「とにかくせめて野犬や夜露をしのげる場所を見つけよう」
「そうですね。それでは」
「うん」
こうして二人は周囲を見回しつつ歩いていった。程なくして一つぽつんとある堂を見たのだった。
それを見てまずは仁八がお淀に声をかけた。
「あそこでどうだ」
「そうですね」
お淀は仁八のその言葉に頷いた。
「あの中でなら問題ないと思います」
「今宵はあの中で一晩だな」
「はい、それでは」
こうして二人はその堂の中に入ることにした。堂は外観はかなり寂れていて今にも崩れ落ちそうだった。木がどれも半分腐ろうとしていた。階段に足をかけただけで崩れ落ちそう
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