2部分:第二章
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だ。二人はそれだけで何か不吉なものを感じた。しかしそれでも野犬や夜露を凌げるのなら。贅沢は言えないのだった。
「かなり酷く寂れているな」
「周りに村もないので誰も参らないのでしょう」
「そうか」
「はい。ですから」
話しながら階段を登り終え堂の戸に手をかける。そこのところもやはり腐りかけている。何とか開けるが。その中もやはり酷いものであちこちに蜘蛛の巣があるのが月明かりに見える。二人はそれを見て絶句した。
その中でお淀が。仁八に対して言うのだった。
「ここで宜しいですね」
「致し方ないだろう」
仁八は苦い顔になっていた。しかしそれでも言うのだった。
「犬に遭うよりましだ」
「確かに」
「では休むとしよう」
あらためてお淀に言う。
「今宵はここでな」
「はい、それでは」
こうして二人は堂の中で休んだ。せめて周りの埃や蜘蛛の巣を払ってそれでその上に寝転がって休んだ。寝苦しくはあったがそれで休むことができた。そして朝日に目覚めると。妙なことが起こっていた。
「!?これは」
まだ寝ているお淀の胸の上に彼が江戸で買ったあの人型の札があったのだ。見ればそれは右から左に袈裟懸けに裂かれていた。
「妙だな。わしの荷物に入れてあった筈なのに」
お淀の上にあったのだ。しかも引き裂かれていた。
「おかしなことだ。これは一体」
「!?おい大変だぞ」
「馬鹿なことをした奴がいたものじゃ」
その時だった。堂の外から声がしてきた。しかもそれは一つではない。
「何だ、一体」
「仁八様」
ここでその声によってお淀も目を醒ました。そして身体を起こして彼に声をかけてきたのだった。彼女は何があったのかわかってはいない。
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