後日談の幕開け
三 変異
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がる粘菌の飛沫。私達のとっての血……命そのものが裂き断たれ、無数の破片、欠片となって散る様を見て。背後、響く銃声と二発の弾丸が、他のアンデッドの足元を穿つ音を聞く。
リティは。きっと、先のこと。怒りに身を任せたこと。周りを見失ったことを悔いていて。肉を貪るのを止め、奥から此方へと近付いてきた巨体へと注意を向けつつも、彼女、リティを見れば。その体は、小刻みに震え、息も乱れた……呼吸の必要ない私たちとは言え。彼女の動揺、心情は。その姿に現れていて。そう、考える私も。先の彼女と同じ。自分の感情。見たくないものを壊したいだけの……けれど。
私は。近付くグール、怪物。死肉を食う様、見続ければ。私の心は壊れてしまう。そんな気がしてならなくて。爪を、再び振り上げれば。
緑色の光。アリスが放ったあの光が、一瞬。一体のグール、私が傷つけたそれを包み輝き。刹那、その体は。見えない腕に弾かれるかのよう。巨大な怪物、幾らか離れたその足元まで吹き飛ばされて。振り上げた腕を振り下ろし、標的としたそれを切り裂けば。その向うに見える、超常の光を放つ彼女の姿があって。
アリスの力は。私の理解の及ばない力は。敵を弾くだけではなく。私が裂いたばかりのグール、深手を追いながらも、その。尖った牙、噛み付かんとする大口と、私の肌の間。攻撃を拒むように、押さえ付けようとするように。私のことを庇うように。緑色の光が輝き、私が負う傷を、僅かなものへと抑えていて。
群がり始めたアンデッド達。グールに貪られながらも、闇雲に辺りを引っ掻き回すそれ等の腕から逃れ。目線を送った先、其処に居るアリスは、震えながら、腰が引けながらも。敵から目を逸らすことなくその力を振るい。リティも、また。背に背負った巨大な銃、翳し。徐々に迫り来る、巨体を引き摺る怪物へと。引き金を引く。
が。銃弾は、その、頭部を掠め。遠く、硝子の扉を叩き割り。甲高い音、落ちる音。金属の枠、残った破片が間を置き落ちるその音を、響かせるのみで。
彼女の顔は。焦りに。不安に。彼女らしくも無く――短い付き合い。分かったような口なんて利けないけれど――動きを止めることなど無いまま、泣き出しそうで。
長引く戦い、焦り。私へと噛み付いたそのグールへと止めを刺し。また、早く、敵を減らさなければと目標を定めようとする。そんな私達を、更に追い詰めるように。銃弾が掠めたばかりの顔。笑みを崩さず、しかし大きく裂けた口は。何か、何か。言葉に出来ない声。硝子の割れるそれにも、錆びた扉の擦れる音にも。牙が肉を穿つ音にも、引き摺る音にもまた、似た。只々不快で、鼓膜を貫くかのような。叫び声を轟かせ。
響き渡る声、アリスの小さな、短い悲鳴。しかし。彼女に目を向けるわけにも行かず。怪物の近く、よろめいていた一体のアンデッド。その体が膨れ
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