後日談の幕開け
三 変異
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ンデッドなのだと、何処か、遠く離れて見る心地で、そう思って。
リティの迷う姿。アリスが勇気付ける姿。共に歩いて、共に進んで。しかし。私は、この身、体の中で。何かが蠢き、這い回る感覚。まるで、無数の虫……けれど、何処か。体に馴染んだ虫の群が。私の中に居るかのような、その感覚に気を取られ続けていて。出来るのであれば、全て吐き出してしまいたい、と。思っても、それが叶うはずも無く……いや。叶ったなら。私はきっと、それに。耐えることなんて出来なくて。
開いた扉。その奥。短かな通路の先、割れた硝子扉、差し込む明かりは濁っていて。そんな、濁った光に照らされ影を伸ばすのは。
人の形。二本の足、二本の腕。頭は一つ、と、人の形を……人の形だけをした。しかし、それは、人間のそれと余りに異なる。大きく裂けた口、尖り突き出した歯。何か、何かを噛み千切り、咀嚼し、飲み込み、歪んだ口から零れた赤い……赤い肉。粘ついた液体。血液のそれではない、私の体、アンデッドの体から流れ出る液体……粘菌。それを飲み、食い、垂らし、呻く、複数の怪物達。
そして。
「っ……」
アリスが一歩、後ずさる。粉々になった診療台は欠片のみを其処に残して。切り潰された体、動くたび、赤い粘菌の噴き出す銃痕。抉られた身。多大な損傷、しかし、それでも動きを止めず……先の部屋で見たときと姿形は大きく変わり、細く引き伸ばされたかのような肉の塊、二つの頭部、笑みは作り物めいて張り付き。貼り付けたまま、周りの――グールとでも呼ぶべきか。自分よりも程度の低いアンデッドを喰らう――怪物達のように。周りの動く屍、喰らい、喰らい、喰らうたびに。
傷を癒す。粘菌を取り込み、部品を取り込み。自分の体として吸収しているのだ。粘菌の吸収、死人喰らいの異形。その仕組みは分からずとも、それが可能であることは何故か、納得し、理解できて。そして。
私にも。きっと。あの芸当は可能であって。
「……リティ、援護をお願い。アリスも、出来得る限りでいい。お願い」
浮かんだ考えを振り払う。違う。私は、あんな。グールや怪物、死体を食い漁るそれとは違う。違うのだと。
指を目一杯に開き。二人を横目に、前へと出る。
「マト……無理、しないでね」
背に掛かるアリスの言葉。酷く優しい言葉、今の。私の心境、後ろめたさを感じるほどに。
「……分かってる。無事に、切り抜けよう」
返す言葉、選んだ言葉は無難なそれで。本当の思い。只、只。目の前のそれ、見たくないから。一刻も早く、壊さなければならないという、自分勝手な衝動、焦燥、隠して。
「……行くね」
私は。汚れた床を、強く蹴る。
此方へと注意を向けたグール、その体。金属の爪を振りかぶって、力任せに振り抜いて。振りぬけば、上
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