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或る短かな後日談
後日談の幕開け
三 変異
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れでも、やはり。彼女(アリス)との距離も、また。どこか遠く。遠く思えて。

 自分で思い返してみても。端から見れば。見ていて気持ちの良いものではなかっただろう、と。同時に、二人は。私のように、怒りを感じていないのか、と。疑問が湧くも、すぐに、感じてはいても隠すだけの……私のように。隠すことさえせず、こうして、距離を作ってしまわぬように。自制していてくれたのだろうと理解して。
 益々、私の。自分勝手な振る舞いに。抑えようという思いさえ湧かなかった。自分自身への嫌悪感が積もるばかりで。

「……リティ」

 手を繋いだ先。彼女の声。

「……何、アリス」

 精一杯に、声を、柔らかく。しかし。それでも強張った。今更、取り繕ったところで、遅く。しかし、それでも。私は。

「気にしなくて、いいからね」

 言葉を、投げ掛けられ。アリスのそれに続くように、マトが止まる。その前には、一つの扉。錆び付き、恐らく、鍵の掛かった……そして、私が。あの部屋の戸を開いたときと同じように。アンデッドの腕力ならば、容易に開く薄い壁。
 その奥で。微かに聞こえる、物音。何かを引き千切る音、砕く音。水音……何かが垂れて、床を打つ音、啜る音。扉を開けて、少し進んだ……廊下か何か。そこまで近くは無いとはいえ。湧き上がるのは不快感、忌避感。他に扉は無く。階段も同じ。進むならば、このまま、この扉の先。そして、また、恐ろしい何かを見て。また、私達は。危険に晒されることとなるのだろう。
 また。そう、また。先の光景を思い出して。込み上げるのは――

「リティ」

 名前を呼ばれ。思わず、体が跳ねる。鼓膜を揺らしたのは、マトの声。動けない私達を庇い。敵へと向かった。彼女の声で。

「こんな状況なんだ。私達だって、大分……大分、取り乱してる」

 振り向いた顔は。少し、悲しそうで。しかし。其処に、私に対する嫌悪や、拒絶の色は無く。私を拒むことは無く。それは、彼女。再び私へ言葉を紡ごうとする、アリスも同じで。

「誰かに向かって……私達に、こんなことをする誰かに向かって。リティがどんなに怒っても、どんなに恨んでも。私達は離れないから……だから、もっと……もっと、私達を、さ」

 私の手、離れ。彼女は。アリスは、マトの傍ら、抜け。
 立ち塞がる扉。ノブにその手を、そっと掛け。

「私達を、頼って」

 彼女は、扉を。そっと鍵を押し壊す、その音と共に。


 扉を、開いた。




◇◇◇◇◇◇

 


 耳を刺すような金属音。錆び付いた扉が、無理やりに押し開かれる音――見た目相応の力なら、決して開けなかっただろう扉。細い細いその腕が、掛かっていた鍵を壊し。その姿を見て、見た目か弱く、幼くとも……ああ、私と同じア
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