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IF物語 ベルセルク編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
最終話 ワルキューレの審判
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あるいは誘い、フェイントか。ヴァレンシュタインの身体が微かに動いたように見えたが……。
「小細工をするな」
「しかし身体が僅かに動きました。ローエングラム侯が如何見たか」
「うむ。二人とも思案のしどころだ」

上手く行けばヴァレンシュタインを動かす事で攻撃しようとしたのだろう。だがヴァレンシュタインは僅かに動くだけで踏み止まった。問題はその動きをローエングラム侯が如何見たか、そしてヴァレンシュタインは動いてしまった事を如何思っているかだ。二人とも次の動きを必死に考えているだろう。

ローエングラム侯がまた距離を詰めた。艦橋の空気が更に硬くなった。間合いに入った、そう思ったのだろう。突然艦橋のドアが開いた、慌ただしい物音を立てて三人の軍人が入って来た。
「エーリッヒ!」
「ヴァレンシュタイン!」

一瞬注意が逸れた。無声の気合いが迸った! 気が付けば二人が接触する程に接近している、そして離れた。ローエングラム侯が逃げる、ヴァレンシュタインが追う、“ちぃぃー”と苛立つような声を上げて更にローエングラム侯が逃げた。もう届かない、二人が距離を取って対峙した。艦橋の空気が緩み彼方此方で息を吐く音が聞こえた。オフレッサーも唸り声を上げている。

「見たか?」
「いえ、あの三人に気を取られました」
艦橋にはクレメンツ提督、ファーレンハイト提督、フェルナー少将の三人が居た。
「……そうか」
「見たのですか?」
オフレッサーが頷いて話し始めた。不覚を取ったか……。

フェルナー少将達が艦橋に入って来るのと同時にローエングラム侯が動いた。おそらくヴァレンシュタインの注意が一瞬だが逸れたのだろう、その隙を突いたのだ。右から薙ぐ様に腕を動かしたらしい。狙いはヴァレンシュタインの左側の頸動脈、喉。ヴァレンシュタインはドルヒでそれを防ごうとした。

しかしローエングラム侯の動きはフェイントだった。侯は薙ぐと見せかけて腕を戻し突きに変えた。当初狙った頸動脈とは反対側の頸動脈を狙う、決まれば瞬時に勝負は付いただろう。だがヴァレンシュタインは僅かに斜め左に身体をずらすと左手でローエングラム侯の右上腕を押さえた。そして右手のドルヒでローエングラム侯を攻撃しようとした。

俺が見たのはそこからだ。ローエングラム侯は攻撃を避けるために後ろに跳ぼうとしたがヴァレンシュタインが腕を掴んだため十分に距離を取れなかった。声を上げたのはこの時だ。ヴァレンシュタインが距離を詰める、ローエングラム侯が右腕を押さえるヴァレンシュタインの左手を振り払うようにして斜め後方に跳んだ……。

フェルナー少将達がヴァレンシュタインに馬鹿な事は止めろと言っている。無視するかと思ったがヴァレンシュタインは楽しみを奪うなと言った。笑みを浮かべながらだ。三人が絶句している。

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