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IF物語 ベルセルク編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
最終話 ワルキューレの審判
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とヴァレンシュタインは左、ローエングラム侯は右に位置している。四メートル、三メートル半、三メートル、ヴァレンシュタインが僅かに腰を落とすとローエングラム侯も腰を落とした。艦橋の空気が痛い程に硬くなった。ヴァレンシュタインは顔の前に右手を置いている。ローエングラム侯も同様だが右手の位置は僅かにヴァレンシュタインより前方だろう。順手と逆手の差だ。左手は二人とも心臓を守る位置に構えている。

「刃渡りは十センチといったところか、短いな、かなりの接近戦になる」
「……切り結ぶというのは難しいでしょう。間合いの取り方の勝負になります」
「そうだな、ローエングラム侯の方が背が高い、となると……」
「多少ですが間合いは侯の方が長い。おそらくは三センチから四センチ、五センチには届かないと思います」
オフレッサーが腕組みをして“うむ”と頷いた。エルウィン・ヨーゼフ二世はじっとヴァレンシュタインを見ている。

「だが構えの差が有るぞ。その分を入れれば……」
「ええ」
ローエングラム侯は前に刃を出す事が出来るがヴァレンシュタインには出来ない。刃渡りの分だけローエングラム侯が有利だ。腕の長さもいれれば十三センチから十四センチ……。
「足長の半分だな。ヴァレンシュタインが踏み込めるかどうか、それが勝負を分けるだろう」

足長の半分か。ほんの僅かな距離では有る。だが近接格闘ではその僅かな距離が生死を分ける。詰めるか、詰められるか……。訓練では詰められるだろう、だが白刃を前に詰められるのか。訓練では強くても実戦では弱いという人間は少なからずいる。ヴァレンシュタインは詰められるのか、ローエングラム侯は……。二人とも近接格闘の経験が多いとは思えない、果たして……。

距離が縮まった、二メートル半。ローエングラム侯が右手を軽く上下前後に動かし始めた。相手への威嚇、そしてリズムを取る事で動きを軽くしようとしているのだろう。だが右手に気を取られるのは危険だ。近接格闘では左手、足、膝、肘、肩、頭、身体の全てが武器になる。肩で相手を押し崩すだけで勝機が生まれるのだ。

ヴァレンシュタインは近付くのを止めた。腰を落としじっとローエングラム侯を見ている。構えは逆手のまま、そして踵が僅かに浮いているのが分かった。良い姿勢だ、前後左右、相手の動きにいつでも反応出来るだろう。踵が地に着いていては反応出来ない。基本は出来ている様だ。

じりじりとローエングラム侯が近づく。距離二メートル、未だだ。未だ踏み込んでもドルヒの刃は届かない。最低でもあと五十センチは距離を詰めなければならない。詰めればヴァレンシュタインを間合いに捉えることが出来る。飛び込んで一撃、可能だがその時はヴァレンシュタインの間合いに入る事にもなる。

ダン! とローエングラム侯が床を音を立てて踏んだ。脅し、
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