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妖女
1部分:第一章
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の目がだった。垂れ気味でそれに目をやるとすぐにその黒い、琥珀色の輝きを放つ瞳に見せられる。穏やかでそれでいて離さないような光を放つその瞳に。誰が魅入られるのだ。
「女の子なのに」
「同性なのに」
 これは学校の女生徒達の言葉だ。
「好きになってしまいそう」
「このままね」
「付き合えないかしら」
 その中の一人がふと言った。
「姉小路さんと。どうなのかしら」
「女の子でしょ」
 周りもそれを言う。当然と言えば当然の突っ込みだった。
「無理に決まってるじゃない」
「けれどもよ」
 それでもその少女は言うのだった。諦めきれないような顔で。
「それでも。告白してみようかしら」
「じゃあしてみたら?」
「法律じゃ禁止されていないんだし」
 それは事実だった。日本においては同性愛は法律では全く禁止されていないのである。それどころが我が国は歴史のうえにおいても同性愛者がそれを理由として公で批判されたり逮捕された者のいない国なのだ。織田信長がそれで批判されたことも一度もない。これが日本の文化なのだ。
「そんなに言うのならね」
「わかったわ」
 この突き放しがかえって彼女を後押ししたのだった。
「それじゃあ。行ってみるわ」
「告白するのね」
「ええ」
 意を決した顔で頷くのだった。
「チャレンジしてみるわ」
「そこまで言うのならやりなさい」
「応援はするわ」
 突き放してはいるがそれでもこう言うのだった。
「頑張ってね」
「わかったわ」
 こうして彼女はまずは清子に声をかけた。精一杯の勇気を振り絞って。
「話があるの」
「・・・・・・ええ」
 同級生なのでタメ口だ。しかしそれでも緊張は隠せずその顔は真っ赤で表情も強張っていた。その顔で必死に彼女に告げたのである。
「放課後にね。場所は」
「何処なの?」
「体育館の裏側」
 そこなら人はいないからだった。実はこの学校のそうしたスポットでもあるのだ。
「そこに来て。いいかしら」
 言いながら目線はじっと上の方だった。清子の反応を窺っているのである。
「それで」
「ええ」
 そして清子もそれに応えた。頷きはしないが言葉で頷くのだった。
「わかったわ。じゃあそこで」
「・・・・・・いいのね?」
 もう一度清子に問う。上目で。
「それで。いいかしら」
「いいわ」
 また答えた。答えに変わりはなかった。
「それでね。じゃあ放課後にね」
「え、ええ」
 清子の方から言われたので逆に戸惑いを覚える。しかし何とかそれを隠して応えるのだった。
「御願い。その時に」
「わかったわ」
 清子は彼女のその言葉に頷いた。こうして放課後にその体育館裏で告白することになった。その放課後。体育館裏は至って静かであった。

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