第32話 気付かれないように近づくのに上から派はいない
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迅は少し考えた後につぶやいた。
「随分と女の子らしくなったなって思ってさ‥‥‥」
その言葉を聞いた俺は反応に非常に困った。
何だかどんどん牙を抜かれて行く気分だった。
女を捨てていた俺が、少しずつ女に戻って行く。
それを肯定も否定もできない。
自分自身どうなりたいかがわからなかった。
「それより、ちょっと近くに″鎧虫″がいるみたいだ。
みんなを起こすのを手伝ってくれ」
迅はアスラとマリーの肩を揺らしながら言った。
え、そんなことがわかるのか?
それが出来るならもっと早くに教えてほしかった。
気になったので訊いてみることにした。
「‥‥‥‥それは迅さんの能力なのか?」
その問いに迅はすぐに答えた。
「能力とか″超技術″とかそんな大層なものじゃないよ。
日頃の訓練の賜物‥‥‥‥かな?」
その口ぶりから察するに、″侵略虫″には
″鎧虫″を察知するレーダーみたいな能力があるらしい。
それを、訓練によってはある程度離れていても
効果を発揮できるようだ。迅の場合は
寝ていてもすぐに起きれるらしい。
(何だか夜中の地震にいち早く気付く親みたいだ)
「起きろホークアイ」
俺は彼の頬をぺちぺちと軽く叩いた。
彼は険しい表情をしながらゆっくりと身体を起こした。
「う〜〜〜‥‥‥‥ん」
片目を擦りながら唸っている。微妙に前後にも揺れている。
その均衡が崩れ、そのまま前に傾いて行き――――――
ぽすっ
俺の胸に倒れ込んできた。
「‥‥‥‥‥〜〜〜〜〜〜ッ!!」
俺は突然の事に頭が混乱した。
恥ずかしさなどのいろいろな感情が交錯して
もう訳がわからなくなった。
一発殴ってやろうと拳を固めた瞬間
ホークアイは寝言のようにつぶやいた。
「‥‥‥‥‥姉ちゃん‥‥‥‥‥」
その一言に俺は呆然とした。
力強く固めた拳を緩めてしまう程だった。
どのようにすればいいかが全く分からなかったので
とりあえず少しの間だけこのままでいてあげた。
「ジェーン、ホークアイは起きたか?」
そう迅に訊かれたので、急いで俺は
ホークアイを大きく揺さぶって起こした。
そして、歩いて別の場所へと移動していった。
**********
「‥‥‥‥‥まぁ、こんなところだろう」
″鎧虫″たちからかなり距離をとったのだろう。
ようやくの休みと全員は腰を下ろした。
「はぁー、寝起きの運動はさすがにキツイぜ」
リオさんは大きく息をついて言った。
(一番起きるのが遅かった自分が悪いのだが)
さすがにホークアイに再び背負わせるのは申し訳ないので
今度はアスラに背負われて俺はここまで運ばれた。
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