9部分:第九章
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「今夜は赤子の怪か」
平太郎は既に落ち着きを取り戻していた。そして赤子の動きを悠然と構えて見守った。
それは一人ではなかった。何人も這い出て来る。
そして平太郎の周りを這い回る。だがそれだけであった。
「やはり何もして来ぬか」
彼はそれがわかると安心した様な笑みを浮かべた。
「貞八よ、中々面白い余興じゃな」
そして貞八に対して言った。
「お主の余興、たんまりと楽しませてもらった。ご苦労であった」
貞八はその言葉を聞くと悔しがりもせずそのままの態勢で姿を消した。やはり煙の様に消えていった。
続いて赤子達も消えていった。そして後にはやはり何も残らなかった。
「赤子共の這った後まで消えているの」
灯りを頼りに畳を見るとそこにも何も残っていなかった。
「さてと」
彼は全てを確かめ終えると壁に背を付けた。
「では休むか。化け物が来たらその時に起きるとしようぞ」
そして彼は眠りに入った。その日はそれで終わりであった。彼は比較的ゆっくりと眠ることができた。
翌日目が醒めるとまず隣村に向かった。そして貞八を尋ねた。
「何じゃ?」
聞くと彼はその日はずっと家にいたらしい。彼の家族もそう言った。
「わしの姿を借りたあやかしか」
「うむ、実に瓜二つであった」
彼は昨夜のことを貞八に説明した。貞八も化け物のことは知っていた。
「面白いのう、わしも有名になったものじゃ」
貞八はそれを聞くと上機嫌で笑った。
「見たいか」
平太郎はそれを聞き話を振ってみた。
「いいや」
だが彼はそれをやんわりと断った。
「お主に迷惑がかかるからいい」
「そうか」
こうして二人は別れた。平太郎は暗くなった頃に家に戻って来た。帰ってみると刀が一振り何処かへ消えてしまっていた。
「これは」
すぐにわかった。化け物共の仕業だ。
「おい」
彼は天井に向かって言った。
「あの刀はわしが恩義ある方から譲り受けたもの。隠してもらっては困るな」
それは事実であった。彼はその刀を剣の免許皆伝の時に祝いの品として剣の師からもらったものだったのだ。
「あれを隠すことは許さん。すぐに戻すがいい」
だが返事はない。これもわかっていることである。
そのかわりに天井から何かがニュッ、と出て来た。それは黒く細長いものであった。
「むっ」
見ればその刀であった。それは天井から生える様に出て来ると下に落ちてきた。そして平太郎の手の中に収まった。
「わかってくれればそれでよい」
彼は満足した声で天井に向かって言った。
「じゃが今度は許さんぞ」
そう付け加えて刀を元の場所に収めた。それが終わると風呂に入った。普段は夕暮れ前に入るがこの日は遅くなったので今入った。風呂はわりかし好きな方である。今は熱い
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