空白期 中学編 28 「真夏の海辺で」
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い。
「私も父が技術者ですからレーネ博士とは面識がありますが、最近はお会いしてませんね。元気で過ごされてますか?」
「元気……なんじゃないですかね」
「微妙な言い方をされますね」
「いやその……うちの義母は基本的に寝不足でふらついてる人ですから」
面識があるだけに普段のあの人の状況を理解してくれたようで、先輩は苦笑いを浮かべる。
話し相手に余計な心配をさせてしまうだけに、この手の話題はあまりしたくなかったりする。昔からあの人の健康には気を遣っているのだが、一向に顔色が良くならない。職業病のひとつというか、ワーカーホリックというか……。
「私の父も徹夜をしたりはしますけど……あの方ほどでは。凄い方ですよね」
はっきり異常と言ってもらっても構わないのだが……先輩がそういうことを言えるわけないか。それに
「そうですね……確かにあの人は凄いです」
本格的に技術者として仕事を始めてから日に日に凄さが分かってくる。あの人は天才だ。
義母さんと比べれば俺は凡人になるし、シュテルも秀才扱いになる気がする。普通複数の研究を同時に近いペースで進めるのは厳しすぎる。今存在している多種な最先端の技術はあの人が生み出していると言っても過言ではないのではなかろうか。
「……まあそこに才能が偏っているのか、生活力のなさも凄いですけど」
「それは……技術者の性ということで目を瞑ってあげては」
「先輩、先輩のお父さん……グランツ博士には奥さんがいるじゃないですか。うちはいないんですよ」
いきなり義父さんと呼ぶ人ができるのはあれだけど、義母さんには幸せになってほしい。というか、俺がいなくなったら……と考えるだけで不安になる。あの人には面倒を見てくれる人物が必要なのだ。
「今はまだ俺やディアーチェがいますから大丈夫ですけど……」
「そうですね……今のうちに家事を覚えてもらってはどうでしょう? やはり家族には家族の時間も必要……」
「先輩……あの人に家事ができると本気で思ってるんですか?」
「えっと……できるんじゃないですかね。あの方はとても理解力がありますし」
「じゃあ先輩が教えてあげてください」
多分俺には無理だ……だってあの人の料理スキルとかシャマルと変わらないから。下手したらシャマルよりひどいかもしれない。
いやまあ、シャマルみたいに料理だけならいいんだけど……見た目とか気にしない人だし、どんな状況下でも寝ようとすれば寝れる人だからなぁ。家と職場でここまで印象が違って見える人は多分いない気がする。
「え、あっその……私」
「すみません、冗談です。他人にあの人の世話を頼むのは気が引けるので俺が頑張ります」
「そ、そうですか……」
えっと……俺、何かおかしなこと言っただろうか。
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