番外『有り得ぬ世界』
交節・ぶつかりし狂気は紅(あか)と青
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一人の青年……であろう人物が、夜の更ける直前の荒野フィールドを、悠々と歩いている。
青年であろうと判断せざるを得ない訳は、青色の髪を肩辺りまでに垂らしている事、男と言うには女顔だと言う事。
白いマフラーと白い和風ローブを身に纏っており、その下は体の線が出にくい和服だと言う事がある。
辛うじて解る骨格や歩き方、佇まいなどから男だと解る程度だろうか。
一見すれば美しい、得意な容姿に目をひかれる彼ではあるが、その顔に張り付いているのは、際立たせる微笑みではない。
謎を含ませる無の表情でもなく、されど凛々しくもない。
浮かんでいる表情は…………狂気だ。
狂気を湛えた笑み……否、笑みを湛えた狂気と言っても差し支えない、そこまでの異質さを感じさせる。
彼の名は“アオ”といい、このデスゲームとなったSAOにおいて、ある意味もっとも異常な人物である。
もう人気などとうに無いこんな中途半端な時間に、歪な彼・アオが向かう先。
それはある情報を耳にした為だった。
曰く――――攻略組の部隊が、ほぼ全員殺された――――という、前代未聞の事件があったらしい。
勿論それだけならば、オレンジギルド《笑う棺桶》の例もあるので、驚きこそすれ復讐に燃えるだの対策を考えるだのするであろうし、こんな人里離れた風景を模したフィールドに彼が脚を運ぶ筈もない。
その噂には続きがあるのだ。
その続きとは……『たった一人の女性プレイヤー相手に壊滅させられた事』である。
MMORPGであるSAOにおいて、突出しすぎた強さを “前線” で持つ事はありえぬ事象であり、信じられないどころの話ではない。
だが、現に攻略組の部隊は壊滅し、女性の人相描きまで出回っているのだから、全てが虚言だとばっさり切り捨てる訳にもいかない。
また、攻略組が弱いと言えばそうでも無く、ステータス差やある程度武器を振りなりている事、そして人数の事もあり『本来なら』、殺人を犯したオレンジプレイヤー―――通称 “レッドプレイヤー” 、その大群に襲われでもしない限り、有り得ないことだ。
詰まる所アオは……その危険極まりない、腕がたつどころの話で無い女性に会いに行く為、このフィールドを歩いているのだろうか。
攻略組複数人で勝てなかった相手に一人など、危険にも程がある行動だ……それも、彼が『普通』のハイレベルプレイヤーであった場合、の話だが。
「フ……渡り合える人間が他に居るかもしれないとはな……ああ、楽しみだ」
心底うれしそうに言葉を口にし、アオは下げてある日本の刀のうち片方の鞘を軽く叩く。
仮に
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