7部分:第七章
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第七章
七日は夕食を終えると来た。台所に行くと白い大袖があった。
「また女か」
それを見て最初に思ったのはそれであった。それを聞いたか袖は怒った様な動きでこっちに来た。そしてその中から手を出してきた。
平太郎に触れようとするが彼はそれをかわした。すると手は諦めたかやがて姿を消した。
「行ったか」
姿が消えたのを確認すると部屋に戻った。そして壁を背にしたまま次の化け物を待つことにした。
「今度は何かな」
そう思うと早速来た。障子がひとりでに開いた。
「よくもまあよく自然に開く障子じゃ」
笑っているとそこからいつもの者達がやって来た。
今度は坊主の首であった。髭があったり、顔が赤かったり、髪がまばらに残っていたりするところを見ると破戒僧のものであろうか。それが串刺しになっている。
「生前の悪行の報いじゃな」
おそらくこの破戒僧達は生前の悪事の末にこうした処罰を受けたのだろう。そしてそれを恨みに思いこうして化けて出て来ている。少なくとも平太郎はそう考えた。
「さて、この連中は何をするのかのう」
刀を持ったまま彼等の行動を見守った。首達は平太郎を睨んだまま彼の周りを飛び回った。それ以外はこれといって何もして来ない。ただ飛んでいるだけである。
「袖よりも害はないのう」
気味が悪いがそれだけである。とりあえず油断していなければ何もしきそうにない。彼は首が消えるまで待つことにした。
明け方になると消えた。やはり鶏の声と共に煙の様に消えていった。
「結局一番怖いのは鶏か」
今度から鶏と一緒に寝ようと思ったがすぐに止めた。臭いうえに五月蝿くてかなわないからだ。
そう考えながら横になった。朝だと出て来る心配はない。暫くぶりに寝転がって休むことができ有り難かった。
「朝までいてくれたらいいのだがのう」
ふとそんな考えを持つ平太郎であった。
とりあえずその日はゆっくりと寝た。夕方まで眠りようやく起き上がった。
「よう寝たのう」
気が付くと日が暮れていた。起きるととりあえず飯を食い化け物を待った。
待つだけだと面白くもない、だが書を読む気にもならなかった。月が綺麗だったのでそれを見ながら酒を飲むことにした。
「やはり月はいいのう」
彼は月が好きだった。満月も三日月も好きであった。
満ちている月は満ちている月で、欠けている月は欠けている月で魅力があった。彼は夜空に浮かぶ黄色く大きな月を見ながら酒をちびり、ちびりと飲んでいた。
月を眺めながらだと酒は一気に飲めない。あくまでそれを眺めながらゆっくりと飲む。それもまた一興であった。
「さてと」
酒がなくなった。彼はそれを脇に置いた。
「今日は何が出て来るかのう」
そして化け物を待った。月を眺めながらゆっくりと待った。
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