暁 〜小説投稿サイト〜
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っていた。
第一話
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「あの、セレーネ様、どいてくれないと立てないです」

 私が苦情を申し立てると、セレーネ様は大人びえた顔に無邪気な子供のような笑みを浮かべてぐっと覗き込んできた。
 
「そう焦らないで。書き間違えちゃったりしたら大変さ」

 書き間違えてもセレーネ様がちゃんと教えてくれれば問題ないのですが……。不満を目に込めると子供をあしらうようにぽんぽんと頭を撫でて、引いた体の代わりに先ほどの羊皮紙を眼前に突き出した。

「ちゃんと成長してるじゃないか。偉い偉い」

 最初、本当に偉い神様からそう言われるのに恐縮に感じていたけど、最近では感覚が麻痺ってきてお姉さんに言われているような気兼ねなさすら感じる。
 さておき、どれどれ私のステイタスは……。


 クレア・パールス
 Lv.1
 力:I40→I44 耐久:I21→I23 器用:I44→I47 敏捷:I90→I93 魔力:I0
 《魔法》【】
 《スキル》【】


 まあ、そう劇的に変わるわけもなく、いつも見ているような伸び代が表示されているわけで……。

「うわあああん!!」
「ど、どうしたの!?」
「今回は結構頑張ったのにぃ!」

 ついさっきのように思い出せる。ダンジョンの中を必死に駆けずり回ってはモンスターと戦って……本当に頑張ったんだけどなぁ……。
 含蓄していた疲労も相まって目の前の現実が重く感じる。思わず叫んだ私にセレーネ様は困りながらも嬉笑を浮かべて返す。

「年端のいかない女の子が一人で頑張ったにしては上出来だと思うけど?」
「で、でも、1とか3くらいしか変わってないじゃないですか!」
「冒険者になってまだ半年くらいしか経ってないのに、これじゃ不満なのかい?」
「不満です!」

 困ったなあとぼやきながらも楽しそうに笑うセレーネ様。自分が感じた手ごたえに対して割りに合わない結果にぐずりながらちゃぶ台に付けば、セレーネ様が直々に作ってくれた夕ご飯が目の前に並ぶ。

「さ、クレアが頑張ってくれたから私もご飯を食べられるんだ。また明日も頑張ろう?」
「うぅ……セレーネ様ぁ」

 めちゃくちゃおいしいご飯にせっせと手と口を動かしながら、明日のための英気を養うのだった。



 私クレアは14歳。つい一年前に故郷が木っ端微塵に破壊されて家族が全員死んだ、天涯孤独の身。
 その故郷の事故に遭った私は奇跡的に無傷で生き残り、すぐそばにあった迷宮都市オラリオにお小遣いを手にすっ飛んでいった。
 まあ助けを求めても何にもされないわけで、ギルドに駆け込んでもダメの一点張りで、冒険者たちにも笑われるだけ。

 途方に暮れた私を助けてくれたのが、セレーネ様だった。出会ったときは本物の女神様が降臨なさったんだって思った。実際
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