4部分:第四章
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
第四章
その日はそれで終わりであった。特に何も出ることはなかった。
翌日は子の時であろうか。行灯が急にその姿を変えた。
「また行灯か」
平太郎は行灯に目を向けた。見れば木から見る見るうちに石になっていく。
「妙なこともあるものじゃ」
三日目なのでいささか落ち着きを持っていた。そしてその行灯が石になっていくのを見守った。
やがて行灯は石塔になった。そしてその場に立っていた。
「ふむ」
蝋燭はその中にある。先程と変わらず部屋を照らしている。
すると今度はその火が激しく燃えだした。昨日と同じか、と思ったが違った。
石塔は火に包まれた。そしてその全てが包まれると今度はまた行灯になった。
「これはまた面白い余興じゃ」
自分に危害が及ばないせいもあり笑って見ていた。寝転がり酒をちびちびと舐めている。暫くすると天井がピクリ、と動いた。
「今度は天井か」
ふと上を見ると青く丸いものがあった。大したことはないと思いその時はそのまま眠りに入った。
「やれやれ」
蚊帳の中に入る。そしてそのまま床についた。
暫く眠った。だが何やら声がする。それで目が醒めた。
「さては」
出たな、と思い刀を手に蚊帳を出る。障子の向こうから女の声がする。
「女怪か」
一昨日は大入道であった。ならば今日は何か。
「鬼婆でも出て来るかの」
冗談混じりにそう言った。だが声が若いのでそれはないと思い直した。
障子が一人でにあいた。そしてそれが中に入って来た。
「!」
それを見て流石の平太郎も思わず息を飲んだ。それはまた何とも異様な化け物であった。
「けけけけけ」
それは女の首であった。逆さになっており首の切り口から血とはらわたを少し出している。
そしてその長く黒い髪を使い歩いている。おそらくそれで障子を開けたのであろう。
「また奇怪なものが出て来たものじゃ」
首はよく見れば整った顔をしている。だがその顔は青白く目はこちらを奇妙な形で見下ろしている。それがやけに癪に触った。
「むん」
平太郎はそれを感じすぐに刀を一閃させた。それでこの面妖な物の怪を成敗するつもりであった。
だがそれは適わなかった。首は髪を使い後ろに跳び退いたからであった。
「甘い甘い」
首は平太郎を笑いながらそう言った。そしてその髪に力を込めた。
「来るか」
今にも跳びかかって来そうであった。彼はもう一度刀に手をかけた。
だが首は平太郎に隙がないのを見て迂闊に動きはしなかった。しかし隙を窺い続けている。
そうしている間に時間だけが過ぎていく。やがて夜が明けてきた。
鶏の声が聞こえてきた。すると首は音もなくすう、とまるで煙の様に消えていった。
「終わったか」
平太郎は鶏の声とその首が消えたのを見て
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ