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SAO─戦士達の物語
GGO編
百十話 トリック
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掛けていたシノンの意識が戻ってくる。
後ろで見ていたキリトが小さく「ざ、雑だな……」と言ったが無視する。

「よぉ、大丈夫かい?お嬢ちゃん」
「りょう、にぃ……」
冗談めかして声を掛けると、目の前に現れた少女の眼が、自分の目と合った。まだ焦点が定まり切っていないが、リョウは微笑しつつ続ける。

「難しいかもしれねぇけど、落ち着け。大丈夫だ、少なくともアイツらは死銃の拳銃にお前が撃たれねぇ限りは、お前を殺したりはしねぇからよ」
寧ろ、今脳波の異常を感知したアミュスフィアに自動切断されてしまい、現実世界で意識を取り戻した詩乃が犯人の顔を目撃してしまうような事が有ればそちらの方が余程危険性が高い。

「でも……でも……っ」
向き合う藍色の瞳の奥には、合い分からず強く恐怖の光が染みついている。リョウは安心させるように、何時ものように二ヤリと笑って言った。

「それに、お前が撃たれるなんざもうありえねぇよ。撃たせねぇからな」
「う……」
その焦りも無く、唯圧倒的な自身だけが有る彼の態度に、不思議な事にシノンは少しずつ安心を得て行く。心が落ち着きを取り戻し、恐怖をパニックにつなげないだけの冷静さが戻ってくる。

「だから、安心しろ。俺の前じゃアイツに、俺の家族やダチを殺させたりはしねぇからよ」
「なっ?」と言ってニカッと笑顔を浮かべたリョウの顔をシノンは少しだけ見つめていたが……やがて、小さな声で言った。

「うん……分かった」
「よしっ」
そう言うと、リョウはようやくシノンの頭を離した。今更ながら顔と顔がごく近くに接近していた事に気が付いたシノンは若干朱くなったが、しかし元々涼人にはそう言った所のデリカシーが欠けている人間だったことを思い出して、諦めた。
同時に、やはりどんな過去が有るとしても、彼は自分の知っている涼人なのだと、この時強く彼女は感じた。

「…………」
アイリはそんな二人の姿を、どこか複雑そうな表情のまま、見守っていた。

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