GGO編
百十話 トリック
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?お前らだって入力したんじゃねぇか総督府で。それを後ろから覗かれたんだ」
「そ、そんな、無理だよ!遠近エフェクトでちょっと離れたら見えなくなるし、私達だってそんな近くに人が居たら気付くもん」
「望遠鏡かスコープで覗きゃいいだろ」
「そ、そんな事したら誰かに見られた途端通報されてアカウント抹消(BAN)……あっ!?」
「あ、アイリ?」
目を見開き、その瞳の奥に戦慄の光を浮かべて口元を掌で抑えたアイリに、シノンが戸惑ったように声を上げる。
アイリが途切れ途切れに結論を紡ぎ出した。
「違う、出来ちゃうんだ……もしアイツの、《メタマテリアル光歪曲迷彩》が、街中でも使えるとしたら……」
「あっ……」
それならば。と、シノンは思わず納得してしまった。しかしそれを否定するように、リョウに尋ねる。
「で、でも鍵は?家の人とか」
「少なくとも初めの二人は、一人暮らしだ。それに家も古いアパート。電子錠も初期型なら、使うもん使えば軽く開けんのも無理じゃねぇ。大体GGOに相手が参加してるってことは多少手間取っても気づかれねぇって事だからな」
「…………」
リョウの言葉に、シノンは息をのむ。
住宅の鍵が、電波式キーレスエントリー錠に変わったのは大体は八年位前からの話だ。
物理的ピッキングは不可能になったものの、初期のころはマスターキーならぬマスター電波が解析されたりし、それがブラックマーケットに流れたこともあったらしい。実際、現在もそう言ったマスター電波は緊急用に病院や警察等には配備されていると聞く。
ちなみに詩乃は現在電波式と暗証番号式のキーを併用している。
「じ、じゃあ死因は……?警察にもお医者さんにも分からない方法で心臓を止めるなんてそんな事出来るの……?」
「多分、なんかの薬品を使ったんだろ。死体は発見された時点でかなり腐敗が進んでたらしいし、飲み食いしねぇでダイブしまくってるヘビーユーザー死ぬ例なんざ今の世の中少なくねぇからな。金目当てじゃねぇからゃ部屋も荒らされねぇ。自然死って判断される可能性の方がよっぽど高けぇし、まして、薬品を注射されたなんざ、分かってて調べねぇ限りは見つけんのはムズいだろうな」
「そんな……」
シノンは俯き加減に地面を睨むと、唇を噛んだ。
それだけ周到に準備をして、唯殺すためだけに人を殺す。それは完全に、シノンの理解の範疇を超えていた。彼等の心意も、感覚も、想像することすらできない。そこにあるのは、ただただ底の見えない悪意……
「狂ってる……」
「そだな」
シノンの呟きに、リョウが肩をすくめて答えた。
「正直御世辞にもまともとは言えねぇ……が、まぁ、それだけアイツはあくまでも《レッドプレイヤー》で居たかったんだろうよ。極端な想像すんなら、アイツにとってはもうそれ以外生き方がねぇ
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