MR編
百三十九話 医療と直方体
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橋医師は一瞬だけ迷うような表情を見せたが、すぐに表情を整えて小さくうなずく。
「私は、倉橋と言います。紺野さんを主治医をしております。いやぁ、よく訪ねて来て下さいました」
「こんの……さん?」
「ユウキさんの事、ですか?」
「はい。フルネームは紺野ユウキさんと言います。ユウキは、木綿に、季節の季と書くんです。ボクは木綿季くんと呼んでいますが……」
其処で倉橋医師は一度アスナを見る、と、小さく微笑んで言った。
「木綿季くんは、最近は明日奈さんの話ばかりしてくれるんですよ……あ、いや失礼、木綿季くんがそうよぶものでつい……」
「いえ、明日奈で良いです」
微笑みながら言う明日奈に倉橋は照れたように笑い、立ち話もなんだから、と上の階にあるラウンジへと移動し始める。何時も振りまいているのであれだが、明日奈はあれで居て案外、自分の容姿とその笑顔の破壊力に疎い所があったりする。
キリトなどは未だに不意打ちだと胸が高鳴っていると本人から聞いていた涼人は、面白がるように小さく苦笑した。
上にあったラウンジは、比較的人通りが少なく、静かな場所だった。ゆっくりと話すには良い場所だ、そして同時に、他人にあまり聞かれたくない話をするのにも、良い場所だろう。
「…………」
「明日奈さんは、VRワールドで、木綿季さんと知り合われたんですよね?この病院のことは、彼女から?」
「あ、いえ。ユウキからは特に何も……」
小首を傾げる倉橋医師に明日奈が答えると、彼は少しだけ驚いたように目を見張った。
「では、独力で此処が?よくお分かりになりましたね……確かに、もしかしたら、貴女が此処に来るかもしれないと木綿季くんが言っていましたが、彼女自身何も教えていないと言っていましたし……正直、先程連絡が来た時は本当に驚いた位でして……」
「じ、じゃあ……ユウキは私の事……」
「えぇ、それはもう、ここ数日毎日のように話してくれますよ……ただ、ね」
其処まで行って、一瞬だけ医師は迷うように視線を動かした後、少しだけ頷いて言った。
「話終わった後、木綿季くんは、何時も泣いてしまうんですよ。「もっと仲良くなりたい、でも出来ない、もう会えない……」と言ってね」
「出来ない……どうして、“出来ない”んですか?何故、“会えない”んですか?」
どうしても納得できないと言うように、明日奈は問うた。急くようなその口調も、ある意味では仕方あるまい。彼女は自らの中にあるその疑問に答えを得るために、この場に居るのだから。
「……そうですね、それに付いて話すには、少し順を追って話さなければなりません。まずは……《メディキュボイド》に付いてから、話しましょうか。受付でこの名前を出されたそうですが、明日奈さんは《メディキュボイド》については、ご存知ですか?」
「あ、
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