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SAO─戦士達の物語
MR編
百三十九話 医療と直方体
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等と、病院特有のにおいを背景にして、涼人が待ち合いのソファの脇で二人を待っていた。

「とりあえず、明日奈。お前受付行って来い、お前の用だしな」
「あ、うん。分かった」
親指で指差して言う涼人に頷いて、明日奈は小走りで受け付けに向けて駆けていく。その様子を眺めながら涼人がソファに座り込むと、美幸もすぐ隣に座る。

「デカイ病院は久々だな」
「うん、私達が入院してから来て無かったもんね」
「ん……そだな」
天井をぼんやりと眺めながら、涼人は呟く。天井の照明の数などを意味も無く数えていると、小さな声で、美幸が言った。

「……此処に、いるかな?」
「……さぁな」
小さく息を吐いて、涼人は淡々と言った。

「何の確信もねー話だ。根拠だって薄弱も良いとこだ。居たら運が良かった、のか、悪かったって言うべきかは分からんが……そんなとこだな。ダメなときはダメだろうよ」
「そう、だね……」
コクリと頷いて、何処か暗い影を落とした表情で美幸は祈るように手を組んで俯く。二人の間に流れる何処か重みのある空気は、受付で何らかの収穫を得たらしい明日奈が二人を呼ぶまで続いた。

────

「やぁ、ごめんなさい、申し訳ない、すみません、お待たせして」
「(おーい、一度に三回謝ってんぞ〜……)」
涼人が内心で突っ込みを入れてしまうような奇妙な挨拶をしながら三人の元へやってきたのは、白衣を着た、見るからに医者と言った風貌の男性だった。
名札に刻まれた名は、倉橋と言うようだ。歳は30代も前半と言ったところだろう。髪はきっちりと七三に分けられていて、物腰はごく柔らかであるものの、理知的な印象を受ける。
ソファから立ち上がった三人が揃って軽く礼をすると、明日奈が少し焦ったような口調で言った。

「い、いえとんでも無いです。此方こそ急にお邪魔をしてしまって……あの、時間はありますからお忙しいようなら幾らでも待てますけれど……」
「(出直す、とは言わんのな)」
ある意味で明日奈らしいそんな言葉に思わず苦笑する。恐らくこの病院に何か手がかりがあるなら、今日は何が何でもそれを掴んで帰るつもりなのだろう。そんな明日奈の言葉に、倉橋医師は首を横に振って笑った。

「今日は午後から非番ですので、寧ろタイミングとしては丁度良かった位です。えっと、結城 明日奈さんですね?」
「あ、はい」
「そちらのお二人は?」
「あ、麻野 美幸と言います」
「桐ケ谷 涼人です。はじめまして」
倉橋医師の言葉に、美幸が慌てたように頭を下げ、涼人もそれにつづく。

「その、二人は、私と同じように、ユウキに聞きたい事があるそうで……」
「すみません……ご迷惑でしたか……?
「……そう、ですか。いえ、構いませんよ。大人数の方がきっと彼女も喜びますから」

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