MR編
百三十九話 医療と直方体
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「病院……?どうしてキリト君が知ってるの?」
「其処が、日本で唯一のメディキュボイドの臨床試験運用をしてる場所なんだ」
「メディ、キュボイド?」
聞いたことも無い単語を聞いて、明日奈は困惑したようにその言葉を繰り返す。和人は少し困ったように頭を掻くと、コクリと頷く。
「必要になったら、多分分かると思う……多分な。それと……実は、アスナに少し頼みがあってさ」
「?何?どうしたの?」
「いや、俺じゃなくて……」
「おーう、話、終わったか?」
「?」
不意に、明日奈から見て後ろ。屋上へ続く階段の入口からのんびりとした声が掛けられて彼女は振り返る。其処には見慣れた着崩し方の制服姿でサンドウィッチをほうばる涼人と……
「サチ……?」
「あはは……ご、ごめんね?お邪魔しちゃって……」
「う、うぅん、そんな事無いけど……どうしたの?頼みごとって……サチからなの?」
「うん……」
こくん、と頷いた美幸の様子に、明日奈は何処となく違和感を覚える。何かを躊躇っているような、迷っているような雰囲気が彼女から感じられたからだ。が、隣に立つ涼人は特に気にした様子も無くのんびりとパンを食んでいる。
『気が付いて、無いの?』
と言うか、美幸の頼みならどうして涼人が此処にいるのだろう?そんな風に思っていると、美幸がゆっくりと明日奈に近付く。一瞬だけ瞳を揺らした彼女は、けれど一息にその言葉を吐きだした。
「ユウキさんに会いに行くなら、私達も一緒に行っていいかな?」
「えっ?」
────
およそ首都圏にしては建物の少ない場所にその建物はあった。
外観は茶色いタイルに囲まれた新しく綺麗な姿をしている。両翼に大きく広がったその建物を見ていると自身の眠って居た病院を思い出し、明日奈は軽く胸の前で手を握る。と、車のドアを閉じた涼人が、何処となく間延びした声で言った。
「結構新しめなとこだなぁ」
「綺麗な病院だね……」
続くように見上げたサチも素直な感想を口にする。
「ね。でも、どうして……」
「……ま、その辺は行きゃわかんだろ。行くぞ〜」
何事かを言おうとして口ごもる明日奈に割り込むように、涼人が言った。その言い回しに何処となく此方を制するような空気を感じて、明日奈は思わずそれ以上の言葉を紡げず止める。せめても、と言うように、明日奈はススス、と美幸の隣に横滑りで移動し、囁くように聞いた。
「あの……リョウは何か知ってるのかな?」
「うーん……どう、なのかな?多分、ユウキさんの事はキリトと同じくらいしか知らないと思うけど……」
私にもよく分からないんだ。と困ったように笑う美幸に、明日奈もそれ以上何も聞くことも出来ず歩き出す。
綺麗に磨かれたガラスのニ重扉をくぐると、入院服姿の子供や車いすの老人
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