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【銀桜】7.陰陽師篇
第2話「風ニモ負ケズ」
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「貴様ァァァ何をしている!!」
「たばかったかァァ!汚いマネを!!」
 四方からの攻撃が少女に迫る。
 細身の少女と巨人の鬼。図体からすれば到底勝てる見こみも逃げる隙もない。
 だが――
「汚い?誰にものを申しているでござんすか」
 空気を裂く音が走る。
 同時に全ての鬼の動きが止まる。
「あっしは外道を極めし鬼神(おに)
 そして次の瞬間―鬼たちは粉々の塵へと化す。
「『外道丸』でござんす」
 少女が名乗り終わる頃には、敵は全て消え去っていた。
 何が起きたのか分からなかったが、小柄な少女が己の等身に匹敵する巨大な金棒を軽々と一振りして、全ての鬼を一気に粉砕したのだ。
 あまりに鮮やかな殺陣は見る者に拍手を奏でさせ、同時に背筋を凍らせるほど。
 可憐な少女がとんでもなくド汚い手で鬼達を瞬殺した光景に、銀時たちは目を丸くするしかない。
「ほら、モタモタしないでさっさと行くでござんすよ」
 何事もなかったかのように武器をしまい、少女はさっきまで大切に持っていた母親の遺影を踏んづけて先に進む。
「踏んだァァ!大切なお母さんの遺影踏んだァァ!!」
 新八のツッコミに外道丸が白けた顔で振り返った。
「お母さん?そんなもの一千年前にとっくにくたばったでござんす。全部猿芝居でござんす」
「芝居?全部芝居だったの!?」
 頭に大量の疑問符を浮かべる銀時に、外道丸は少し意外そうに目を瞬かせた。
「コイツは驚いた。敵を欺くために芝居に付き合ってくれていると思いやしたが、まさか信じてたんでござんすか。……銀時様、一つ忠告しておくでござんす」
 少女は改めて銀時を見返してから、『主と式神』の関係について語り出した。
 本来式神は術者が作り出す道具。生みの親に従順な式神を使役するのが最も都合がいいが、無から有を生み出すには相当な霊力が必要とされる。その為、悪態をついて暴れる妖魔たちを調伏させて(しもべ)にさせるのがほとんどだ。
 だが力でねじ伏せて築いた主従関係は、所詮(しょせん)表面上でしかない。調伏された彼らは自由を奪われ無理矢理こき使われている奴隷にすぎず、主に抱くのは憎悪のみ。そんな彼らを従える術者は、月のない夜に後ろから刺されてもおかしくないのだ。
 銀時に仕える少女―『外道丸』もまた、平安時代に大江山で暴れまわっていた所を結野衆に調伏された鬼。『式神』の仮面を被っただけの化け物。
「――ですから主に力なしと思えば、いつ何どきまた牙をむくかわかりやせん」
 言葉こそは丁寧に、外道丸は己の瞳を銀時に向ける。
「夢々お忘れめさるな。あっしがあなたを常に見ていることを」
 全てを見透かすかのような、闇に満ちた眼球を。


 再び歩き出す外道丸からかすかに聞こえる不気味な微笑が耳に残る。
 恐怖に口元を
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